セクメト (小惑星)

小惑星セクメト (5381 Sekhmet) とその衛星

小惑星「セクメト」は、太陽系内を巡る数多くの天体の一つであり、正式な識別番号は5381が付与されています。この天体は、地球近傍小惑星の中でも特に注目される「アテン群」に分類されています。アテン群とは、その軌道が地球軌道の内側に近日点を持つという特徴を持つ小惑星のグループです。セクメトは、著名な天文学者であるキャロライン・シューメーカー氏によって、アメリカ合衆国カリフォルニア州にあるパロマー天文台にて発見されました。

この小惑星に「セクメト」という名前が与えられた背景には、古代エジプト神話の存在があります。セクメトは、ライオンの頭を持つ恐ろしい姿で描かれることが多く、破壊、戦争、疫病を司る一方で、医療や治癒、豊穣をもたらすという、二面性を持つ強力な女神として崇拝されていました。発見された小惑星に、この力強く神秘的な女神の名を冠することは、天体への畏敬や発見者の興味を示すものでしょう。

セクメトに関する科学的な探査が進む中で、特に重要な発見がなされました。それは、セクメトが単独の天体ではなく、衛星を持つ「二重小惑星」であるという事実です。この衛星の存在が明らかになったのは2003年5月のことです。プエルトリコにあるアレシボ天文台の観測チームが、高性能なレーダー装置を用いてセクメトの詳細な調査を行っていた際に、主星の周囲を回る小さな天体の存在を確認したのです。この発見された衛星には、暫定的にS/2003 (5381) 1という符号が与えられました。

レーダー観測によって得られたデータは、この衛星の具体的な姿や動きを明らかにする手助けとなりました。判明したところによれば、衛星の直径はおよそ300メートルと比較的小さな天体です。主星であるセクメトから平均して約1.54キロメートルという比較的近い距離を保ちながら、その周囲を軌道運動しています。この衛星がセクメトの周囲を一周するのにかかる公転周期は約12.5時間と測定されており、これは地球の半日強に相当する時間です。さらに、衛星自身の自転周期も推定されており、約10時間で自身の軸を中心に回転していると考えられています。公転周期と自転周期が近い値を持つことは、潮汐力による影響など、天体の進化に関する興味深い示唆を与える場合があります。

小惑星セクメトとその衛星からなるこの天体システムは、地球近傍小惑星でありながら二重構造を持つという点で、天文学的に非常に価値のある研究対象となっています。このような二重小惑星系の詳しい性質を調べることは、太陽系がどのように形成され、小惑星がどのように進化してきたのかを理解する上で、貴重な情報を提供してくれるのです。今後の観測や探査によって、セクメト系に関するさらなる詳細が解明されることが期待されています。

もう一度検索