セク・トゥーレ

アフメド・セク・トゥーレ：ギニア独立の父と独裁者

アフメド・セク・トゥーレは、1922年1月9日、ギニアのファラナで生まれました。国民的英雄サモリ・トゥーレの曽孫にあたる彼は、郵便労働者として働きながら労働組合運動を通じて政治の世界へ足を踏み入れました。1952年にはギニア民主党（PDG）書記長に就任し、1953年のゼネストを成功させることで、国民的指導者としての地位を確立しました。

1956年にはフランス国民議会議員に選出され、フランスの植民地支配からの独立に向けた活動を本格化させます。そして1958年、フランス第五共和政憲法下の住民投票において、他の植民地がフランス共同体への参加を選択する中、ギニア共和国はトゥーレの指導の下、フランスからの完全独立を宣言しました。この際、トゥーレは「隷属の下での豊かさよりも、自由のもとでの貧困を選ぶ」という有名な言葉を残しています。

しかし、完全独立はギニアにとって容易な道ではありませんでした。フランスは援助を完全に打ち切り、植民地行政官たちは事務机まで持ち去り、ギニアの行政と経済は麻痺状態に陥りました。この危機を乗り越えるため、トゥーレはソ連との連携を強め、社会主義路線を歩むことを選択しました。さらに、ガーナのクワメ・エンクルマとともにアフリカ諸国連合の結成にも尽力しました。

1967年からは中華人民共和国との関係を強化し、人民公社の影響を受けた地方組織が作られ、中国の援助によってギニア人民宮殿などが建設されました。しかし、一方で、トゥーレ政権は政敵や人権論者に対する弾圧を強め、恐怖政治を敷きました。1977年には物資不足による暴動が発生し、経済自由化が図られましたが、経済状況は改善せず、国民の不満は高まりました。

セク・トゥーレ政権下では、密告が横行し、政治犯の粛清が繰り返されました。反体制派とみなされた者は、首都コナクリ近郊の政治犯収容所、キャンプ・ボワロに送られ、虐殺されることもありました。アフリカ統一機構初代事務総長ディアロ・テリもその犠牲者の一人です。推定200万人のギニア国民が近隣諸国へ亡命したと言われています。また、トゥーレは自身の出身民族であるマリンケ族を優遇し、フラニ族などの少数民族を迫害したことも、国民の不満を増大させる一因となりました。

1984年、心臓疾患によりアメリカ合衆国で死去したトゥーレの後、軍のランサナ・コンテがクーデターを起こし、無血で政権を掌握。コンテは直ちに1000人の政治犯を釈放しました。トゥーレはコナクリのモスクに埋葬され、1999年には中国の援助により建設されたギニア大統領府に彼の名が冠せられました。

近年、セク・トゥーレ政権下の犠牲者への再評価の動きが高まっています。2021年には、1971年の虐殺から50年を機に、犠牲者の遺族が政府に対して名誉回復と威厳のある埋葬を求める訴えを起こしました。

アフメド・セク・トゥーレは、ギニアの独立に大きく貢献した人物である一方、独裁者としての側面も持ち合わせていました。彼の生涯は、アフリカの独立と発展、そして独裁政治の危険性について、多くの示唆を与えてくれる複雑なものです。彼の業績と負の遺産は、ギニアの歴史、ひいてはアフリカの歴史において、今後も議論が続けられるでしょう。

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