セシル・デイ＝ルイス

セシル・デイ＝ルイス：詩と推理小説の両分野で活躍した文豪

セシル・デイ＝ルイス (1904年4月27日 - 1972年5月22日) は、アイルランド出身のイギリスを代表する詩人、作家、そして推理作家として知られています。1967年から1972年にかけて、イギリス桂冠[[詩人]]を務めたことでも有名です。俳優のダニエル・デイ＝ルイスを息子に持ち、詩人オリヴァー・ゴールドスミスは母方の遠縁にあたります。

生涯と詩人としての活動

1904年、アイルランドの牧師の家に生まれたデイ＝ルイスは、一家と共にロンドンに移住。オックスフォード大学ウォダムカレッジ在学中は、後に生涯の友人となるW・H・オーデンと出会いました。在学中から詩作の才能を発揮し、卒業後は教師の職に就きながら、詩作を続けました。1925年に発表した処女詩集『Beechen Vigil』で高い評価を受け、詩人としての地位を確立。その後も数多くの詩を発表し、詩壇で重要な存在となりました。第二次世界大戦中は政府の情報部に勤務、戦後は母校の教授に就任するなど、多方面で才能を発揮しました。そして1967年、前任者ジョン・メイスフィールドの死去に伴い、イギリス桂冠[[詩人]]に就任。この栄誉ある地位に就いたことで、彼の詩人としての功績が改めて広く認められました。1972年、アイルランドでその生涯を閉じました。

推理作家「ニコラス・ブレイク」としての顔

デイ＝ルイスは、詩作活動と並行して、ニコラス・ブレイクというペンネームで多くの推理小説を発表しました。特に日本では、この推理作家としての名の方が広く知られていると言えるでしょう。生活のため、1935年に発表した処女作『証拠の問題』を皮切りに、20作以上の推理小説を執筆。その作品群は高い文学性と巧みな構成で評価され、特に1938年発表の『野獣死すべし』は代表作として名高く、今でも読み継がれています。これらの作品には、多くの読者に愛されたシリーズ探偵ナイジェル・ストレンジウェイズが登場します。

デイ＝ルイスの推理小説は、マイケル・イネスなどの作品と同様に、江戸川乱歩によって「イギリス新本格派」と称されるようになりました。その作風や登場時期から、このジャンルを代表する作家の一人として位置付けられています。

批評家の視点

著名な推理小説家レイモンド・チャンドラーは、1950年の手紙の中で『野獣死すべし』について言及しています。彼は、物語の構成や描写を高く評価しながらも、素人探偵であるナイジェル・ストレンジウェイズと彼の妻については、やや否定的な見解を示しています。チャンドラーの視点から見ると、素人探偵とその妻という設定が、物語の全体的な印象を損ねていると捉えたようです。この批評は、デイ＝ルイスの作品に対する多様な評価の一端を示しており、彼の作品が様々な解釈を生み出す魅力を持っていることを物語っています。

著作一覧

デイ＝ルイスは、詩集、自伝、児童向け小説、そして推理小説など、幅広いジャンルの作品を遺しました。代表的な作品には、『詩をよむ若き人々のために』、『自伝　埋もれた時代　若き詩人の自画像』、『丘の上のカシの木』、『オタバリの少年探偵たち』、そしてニコラス・ブレイク名義の推理小説『証拠の問題』、『死の殻』、『野獣死すべし』、『雪だるまの殺人』などがあります。これらの作品は、現在でも翻訳され、多くの読者に親しまれています。彼の作品は、詩と推理小説という異なる分野において、それぞれに高い評価を獲得した、稀有な存在であることを示しています。彼の多才な才能と幅広い作品群は、今後も多くの読者を引きつけ続けることでしょう。

もう一度検索