セルゲイ・エリセーエフ

セルゲイ・エリセーエフの生涯と業績

セルゲイ・グリゴリエヴィッチ・エリセーエフは、1889年1月13日にロシアのサンクトペテルブルクで生まれました。彼は裕福な商人の家系で育ち、特に「エリセーエフ商会」という著名な食料品店を運営していた家族の一員でした。彼の生い立ちは、その後の学問の道や文化交流に大きな影響を与えました。

学問の道への道のり

エリセーエフは12歳の時、パリ万国博覧会で広がる東洋文化への興味を持ち始めました。さらに日本の勝利をきっかけに、日本研究に没頭することを決意します。1907年にはベルリン大学に留学し、日本語を学び始めます。ここで出会った日本の言語学者・新村出の影響を受け、日本留学を目指しました。

1908年、エリセーエフは東京帝国大学国文科に入学。彼の入学に際しては、新村や芳賀矢一などが支援を行いました。1912年には東京帝大を4席で卒業し、卒論は松尾芭蕉に関するものでした。彼は正式に国文科を卒業した初めての外国人となり、卒業式には明治天皇が出席する中、栄誉を享受しました。

日本での文化交流

在学中、エリセーエフは日本語を徹底的に学び、文学サロンを開催して文学者たちと交流を深めました。有名な夏目漱石との関係もあり、彼からの影響も大きかったようです。漱石の詩が記された『三四郎』は、彼の家宝として大切にされました。

ロシア革命とその後

卒業後、エリセーエフはペトログラード大学で教壇に立ちますが、ロシア革命が発生。彼は革命を支持したものの、ブルジョワであったため逮捕され、獄中では『それから』を読みました。その後、彼は1920年に家族とともにフィンランドに亡命します。この亡命生活については、日本語で記された著書『赤露の人質日記』に詳細が記されています。

フランスでの生活を経て、エリセーエフは1932年にアメリカに移り、ハーバード大学で講師を務めます。彼の指導を受けた学生には、エドウィン・ライシャワーやドナルド・キーンなどがいます。また、第二次世界大戦中は米軍の対日戦略に協力し、一部の報道では、彼が戦略的に重要な文化財が多く存在する京都の空襲回避を提言したとされています。

晩年と業績

1956年、エリセーエフはフランスに戻りますが、そこでの彼の存在は忘れられつつありました。晩年は寂しいものとなり、1975年4月にパリで亡くなりました。彼の影響は、後続の日本学者たちに強く受け継がれています。

彼の業績としては、日本文学の翻訳や日本に関する多くの研究があり、国際交流基金賞を受賞しています。また、家族においても彼の長男、ニキータ・エリセーエフは中東学の専門家、次男のヴァディム・エリセーエフも日本学者として名を馳せました。

今回取り上げたエリセーエフの生涯は、彼が日本とロシア、さらには西洋との文化的な橋渡しをしたことを示しています。彼の努力と影響力は、今もなお日本学の発展に寄与し続けています。

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