セルビア公国 (近代)

セルビア公国の歴史

セルビア公国（Кнежевина Србија）は、1817年から1882年にかけてバルカン半島に存在した国家である。この時期のセルビアは、オスマン帝国の影響を受けつつ、自らの自治と独立を求めて激動の歴史をたどった。

自治公国時代

セルビアの歴史は、1804年に始まった第一次セルビア蜂起に遡る。この蜂起はオスマン帝国の圧政に対する抵抗運動であったが、露土戦争の終結に伴い失敗に終わった。これを受けて、一時的にオスマン帝国の支配が復活したものの、1815年に始まる第二次セルビア蜂起が鍵となった。この蜂起を指導したのは、豚商人であったミロシュ・オブレノヴィッチである。

第二次蜂起の結果、1817年にセルビアは公国としての地位をオスマン帝国に認められ、オブレノヴィッチ家が支配する自治公国が誕生した。初期のセルビア公国は、オスマン帝国のベオグラード県に相当する地域をその領土としていた。1830年には完全自治が承認され、さらに1833年には領土の拡大が認められたものの、オスマン帝国への貢納が義務づけられた。この時期は、ミロシュの中央集権化への志向と、地元の村落自治を重んじるリーダーたちとの間での対立が激化し、政治的混乱が続いた。

政治の安定と護憲党の成立

ミロシュの抵抗の後、1838年にはオスマン帝国から憲法が公布され、翌年には彼が退位し息子ミラン・オブレノヴィッチ2世に譲位した。しかし、その後の後継者問題から再び混乱が生じ、1842年にはアレクサンダル・カラジョルジェヴィッチが公位を得ることとなった。

この時期には「護憲党」と呼ばれる政治勢力が興隆し、憲法の擁護と政治の安定を求める動きが強まった。国立銀行の設立や民法の導入が行われ、近代的な国家機構が整備された。また、1844年には外務大臣のイリヤ・ガラシャニンが「ナチェルターニェ」という秘密文書を作成し、将来的にセルビアが独立国家となる方策が示された。これが「大セルビア主義」の思想の発展へと繋がっていった。

分権派と中央集権派の対立

アレクサンダルは次第に中央集権化を進め、再び地方勢力からの批判が強まった。1858年に議会が召集されると、分権派はオブレノヴィッチ家に集結し、アレクサンダルの廃位が決定される。この結果、1860年にミハイロが再びセルビア公とされ、彼は軍備の増強や周辺国との同盟を進めた。しかし、1868年に彼は暗殺され、ミラン4世が公となった。

新たに自由主義派によって制定された憲法により、議会政治が定着し、政党が形成されるようになった。しかし、オスマン帝国との対立が続く中、1875年にヘルツェゴヴィナ蜂起が発生し、これを受けて開戦の是非を巡る政治対立が生じた。

独立公国への道

セルビアは1876年にオスマン帝国に対して開戦し、ロシアの介入を受けて勝利を収めることになる。1882年には国王が誕生し、セルビア公国は王制へと移行した。これにより、セルビアの独立と領土拡大が成し遂げられ、大国の影響から解放される道を歩み始めた。

歴代の君主はオブレノヴィッチ家とカラジョルジェヴィッチ家が交互に政権を担い、各時代で変わる政治的景観を反映していた。セルビア公国の歴史は、バルカン半島の政治地図を形作る重要な要素であった。

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