セルース猟獣保護区

セルース猟獣保護区: ニエレレ国立公園

セルース猟獣保護区は、タンザニアに位置する広大な動物保護区であり、現在は狩猟が厳しく禁止され、純粋な自然環境の保全が行われています。この地域は、もともと狩猟を目的とした保護区として設立されましたが、今日ではその役割が大きく変わり、動物相の多様性や生態系の豊かさから世界的に評価されており、ユネスコの世界遺産にも登録されています。保護区の名称が示すように、セルースは狩猟対象となる動物たちを指しますが、現在はそれが目的ではなく、広大な自然環境を保持するために貢献しています。特に、動物たちの生存環境がほとんど人の手が加わることなく、保存されている点が評価されています。

歴史

この保護区の起源は1905年にさかのぼります。当時ドイツ領東アフリカの一部であったこの地域は、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世によりその妻アウグステ・ヴィクトリアに贈呈されました。最初はアウグステが狩猟を楽しむためのための特別な場として設定されていました。しかし、第一次世界大戦後、この地域はイギリスの領土となり、保護区は「セルース猟獣保護区」と改名されました。この名前は、探検家のフレデリック・セルーを称えるもので、彼は1918年に戦死しました。

その後、保護区は拡大の一途をたどり、多くの開発計画や観光化の議論にもかかわらず、自然環境は保たれました。2019年には、北部の広大な部分が国立公園に認定され、「ニエレレ国立公園」という新たな名称が付けられました。この名前は、タンザニアの初代大統領であったジュリウス・ニエレレに由来しています。

動物相

セルース保護区で確認されている大型動物は、数万頭から10万頭以上とされ、アフリカゾウやアフリカスイギュウ、オグロヌー、サバンナシマウマ、インパラなどが生息しています。その他にもカバ、キリン、さまざまなレイヨウ、チーター、リカオン、ナイルワニといった多くの動物たちが生活しています。密猟の影響を受けながらも、クロサイもここで生き延びています。

また、セルース保護区は鳥類の種類も多様で、ウズンガモリテッケイやベニバネタイヨウチョウなどが見られます。一方で、ツェツェバエやブラックマンバといった脅威となる生物も存在し、これらは一部の人間から敬遠される要因となる一方で、環境保全に寄与している側面もあります。

植物相

この保護区には、落葉樹林であるミオンボ、雨林、草原、河畔林、沼地など多彩な植生があります。全体で確認されている植物の種類は2,000種を超え、中にはアカシアなどの重要な植物が含まれています。

世界遺産登録基準

セルース猟獣保護区は、次のような条件を満たすことで世界遺産に登録されています。
1. 陸上や淡水、沿岸・海洋生態系の進化と発達を示す顕著な例であること。
2. 生物多様性保全にとって重要な自然生息地を含むこと。(特に絶滅の危機にある種に関連した生息地が含まれる)。

このように、セルース猟獣保護区はその特異な生態系と歴史的背景から、単なる保護区にとどまらず、地球の自然遺産としての重要性を持つ場所となっています。

もう一度検索