セレーネ (競走馬)

セレーネ（Selene）は、ギリシャ神話の女神の名を冠したイギリスの競走馬、そして繁殖牝馬として歴史に名を刻んだ一頭です。その体高はわずか15ハンド2インチと小柄であり、クラシック競走への登録は見送られました。しかし、その小さな体躯からは想像もできないほどの偉大な競走成績を残しました。

2歳時には11戦8勝という輝かしい成績を収め、ラウスメモリアルステークスやチェヴァリーパークステークスといった重賞競走を制覇しました。3歳時においてもその活躍は続き、11戦中8勝という驚異的な勝率を誇りました。ナッソーステークスとパークヒルステークスで優勝を果たし、コロネーションカップでは2着に入賞するなど、イギリス競馬界でその名を轟かせました。

しかし、セレーネの真価は競走馬としての活躍だけではありませんでした。繁殖牝馬としての功績は、競走馬としての成功をはるかに凌駕するほど大きいと評価されています。特に、イギリスクラシック三冠馬ゲインズバラとの間に誕生した産駒、ハイペリオンは、母譲りの小柄な体格でありながらも、競走馬として、そして種牡馬として類まれな成功を収めました。

ハイペリオンは20世紀前半を代表する名馬と称賛され、その血統は現代のサラブレッドにも多大な影響を与えています。セレーネの小さな体格という特徴が、ハイペリオン、そしてその子孫へと受け継がれていった点は興味深い事実です。なお、ギリシャ神話においてはハイペリオン（ヒュペリオン）はセレーネの母とされていますが、セレーネとハイペリオンの関係は、親子関係が逆転している形となっています。

セレーネはハイペリオン以外にも、14頭の産駒を残しました。その中には、シックル、ファラモンド、ハンターズムーンといった、それぞれがそれぞれの分野で成功を収めた優秀な競走馬や種牡馬が含まれています。シックルはグッドウッドプリンスオブウェールズステークスを制覇し、2000ギニーで3着に入るなど活躍を見せ、アメリカリーディングサイアーにも2度輝きました。ファラモンドもミドルパークステークスを制し、アメリカで成功した種牡馬となりました。そしてハイペリオンは、エプソムダービーとセントレジャーステークスを制覇し、イギリスリーディングサイアーに6回も輝いた、まさに伝説的な名馬です。ハンターズムーンはアルゼンチンで活躍した大種牡馬として知られています。セレーネの産駒の活躍は、彼女がいかに優れた繁殖牝馬であったかを物語っています。これらの馬たちは、現代競馬に多大な影響を与え続けているのです。セレーネの血統は、世界中の競馬界に深く根付いています。その小さな体躯からは想像もつかないほどの偉大な功績を残したセレーネは、まさに競馬史に輝く一頭と言えるでしょう。

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