センス@

大阪府茨木市出身の映画監督、プロデューサー、脚本家。本名は森川芳昭。1960年 12月12日生まれ。映画団体エンドレスフィルムに所属し、多様な映像作品の制作に携わっている。

来歴とキャリア

早稲田大学社会科学部を卒業後、1984年にクラリオン株式会社に入社。長らく会社員として勤務する。2001年、デジタルビデオ技術の普及を機に、会社勤めに区切りをつけて映像制作の世界へ転身した。約25年のブランクを経て、再び映画製作への情熱を燃やすこととなる。

映画監督としての活動は2000年にスタート。この頃から「センス@」という活動名を使用し始める。そして2004年、デジタルビデオを用いた初の長編監督作品となる『センチメンタルブルー』を発表し、下北沢トリウッドにて公開。この作品はスニークプレビュー上映で高い評価を得て、異例の2週間のロードショー公開が実現した。翌年にはDVDが全国で発売され、多くの視聴者に届けられた。

『センチメンタルブルー』のDVDに同時収録された短編映画『さよならのkiss』の制作においては、当時まだ珍しかった革新的な手法が採用された。SNSプラットフォーム「mixi」を使い、白紙の状態から各分野の専門家を募集し、オンライン上での議論を重ねながら映画を作り上げていくという、いわゆる「SNS型制作」の先駆けとして大きな話題を呼んだ。この試みはmixiの公認を得て行われ、メジャー公開作品のクレジットロールに日本で初めて「mixi」の名前が記載されたことでも注目され、各種メディアで紹介された。

このユニークな制作スタイルはさらに進化を遂げる。2008年には、ネット生放送プラットフォーム「stickam japan」にて冠番組「スティッカムTV ヲタch」を立ち上げ、制作とMCを担当。番組の生放送中に視聴者とリアルタイムで対話し、企画の立案からストーリーの構築、さらにはプロモーション戦略に至るまで、観客の意見を積極的に取り入れながら映画を作り上げるという、他に類を見ない試みを行った。この視聴者参加型プロジェクトから生まれたDVD映画『ワンちゃんねる誕生編』では、実際の番組生放送中の視聴者チャット画面を映画のクライマックスシーンに組み込むなど、メディアの特性を活かした表現も実践された。

人物と映画への造詣

センス@の映画への情熱は若い頃から顕著だった。高校に進学すると同時に自ら映画研究部を設立し、8ミリフィルムでの映画製作に没頭。同時に、全大阪映画サークル協議会（映サ）に所属し、活動の中心メンバーとして活躍した。映サでは、イングマール・ベルイマン、アンドレイ・タルコフスキーといった世界的な巨匠たちの作品から、アメリカンニューシネマ、ヌーベルバーグ、キネマ旬報ベスト・テン受賞作、さらには日本のチャンバラ映画に至るまで、国内外の多様な名作映画の上映会を精力的に企画・主催し、映画文化の普及に貢献した。当時2万部を超える発行部数を誇った映サの機関紙では、映画批評や紹介記事を多数執筆。同紙には、当時著名な映画評論家であった佐藤忠男なども寄稿していた。

また、映画業界との関わりも早くから持っていた。アート系映画の拠点であったATG（日本アート・シアター・ギルド）の封切館、大阪の北野シネマでのアルバイト経験があり、そこでの繋がりから高林陽一監督との交流も生まれた。高校生でありながら、著名な浦山桐郎監督と夜通し映画について語り合ったという逸話も残されている。1970年代の大阪で独特の存在感を放っていたミニコミ誌『プレイガイドジャーナル（プガジャ）』とも親交があった。

大学時代やサラリーマン時代は一時映画の世界から離れるが、デジタルビデオの登場が、彼を再び映画製作へと駆り立てることとなる。その豊富な映画知識は、個人のウェブサイトで公開した「日本映画お宝データベース」にも活かされており、日本映画における特定のテーマ（有名女優のヌード出演歴など）をリスト化したこのデータベースは、多くの映画ファンから注目を集めた。

さらに特筆すべきは、大学在学中に経験したアルバイト先である。東宝が運営していた伝説的なトップレスレビューショーの劇場「日劇ミュージックホール」に4年間勤務。当時の演出家には、後の演劇界を牽引する蜷川幸雄などもおり、一般的な映画人とは異なるユニークな背景を持つ。

このように、初期の熱狂的な映画啓蒙活動、長年の会社員生活、そしてデジタルビデオによる映画界へのカムバック、そしてSNSやネット生放送を活用した革新的な制作手法など、多岐にわたる経験と深い映画愛が、センス@の作品世界とキャリアを形成している。

主な作品

映画（監督）

『センチメンタルブルー』（2004年）
『平成トンパチ野郎～男はツラだよ～』（2009年）

その他（主な関与作品）

『昆虫探偵ヨシダヨシミ』（2010年、メイキング撮影・編集）
『ナイントゥイレブン』（2010年、プロデューサー・メイキング撮影）

テレビ

『HOTでゴメン』（2009年、KBS京都、撮影・編集・編集構成）

ネットテレビ

『スティッカムTV ヲタch』（2008年3月～2009年1月、stickamjapan、制作・MC）

著書

* 『企業にとって女性とは何か』（1991年、共著）

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