センチュリータワー

センチュリータワー：個性と歴史が織りなす高層ビル

東京都文京区本郷（御茶ノ水）にそびえ立つセンチュリータワーは、単なる高層ビルではありません。その誕生から現在に至るまで、数々のドラマを秘めた、独特の存在感を放つ建造物です。

始まりはアパートから

現在のセンチュリータワーが建つ地には、かつて「お茶の水文化アパートメント」という日本におけるアパートの先駆け的存在がありました。戦後には進駐軍の宿舎として使用された後、旺文社の創業者である赤尾好夫氏によって買い取られ、「日本学生会館」として運営されていました。

赤尾一夫氏とセンチュリータワー

好夫氏の死去後、その長男である赤尾一夫氏が、旺文社グループの新たな拠点としてセンチュリータワーの建設を計画しました。一夫氏はモダンアートの愛好家としても知られ、香港上海銀行ビルに強い感銘を受けたことから、イギリスの著名建築家ノーマン・フォスターを設計者に招聘。巨額の設計費用を投じ、独特のデザインのビルを建設しました。

フォスターの設計と建築上の工夫

高さ72メートルものアトリウムで連結された南北のツインタワーという、他に類を見ない構造は、建築基準法との兼ね合いが大きな課題となりました。フォスター氏の当初案は防災規定に抵触する可能性がありましたが、大林組との綿密な検討の結果、加圧防煙方式という独自の防災システムを開発。法令の認可を取得し、建築を実現しました。

個性的なビル内部

一夫氏の好みが反映されたビル内部は、贅沢な空間で満たされていました。地下には高級クラシックカーのコレクションを収蔵、専用エレベーターでアクセスできる上層階には、金色の仏像が鎮座する広大な執務室や、迎賓館のような豪華な空間、フィットネスクラブなどが設けられていました。さらに、2000点もの古美術を収蔵する「センチュリーミュージアム」も併設されました。

オフィススペースには、日本航空や大林組設計部などが入居していましたが、バブル崩壊後、空室が目立つようになりました。その後、加賀電子などが本社として利用するなど、テナントは変遷を繰り返しました。レストランなども併設され、複合的な商業施設としての機能も備えていました。

順天堂大学への移行

2007年、センチュリータワーは学校法人順天堂によって取得され、校舎として改修されました。2014年には「順天堂大学日本医学教育歴史館」が開設されました（現在休館中）。

サブリース訴訟

センチュリータワーは、バブル崩壊後の「サブリース訴訟」でも注目を集めました。オーナーであるセンチュリータワーと住友不動産との間で、賃料減額をめぐる長期間にわたる訴訟が繰り広げられ、最終的には和解が成立しました。この訴訟は、サブリース契約における借地借家法の適用に関する最高裁判所の画期的な判決を生むこととなりました。

センチュリータワーの今後

旺文社一族のこだわりと、バブル経済の栄枯盛衰、そして法的な争いを経て現在に至るセンチュリータワー。その独特の建築様式と歴史は、多くの人の記憶に刻まれています。順天堂大学による活用が、このビルの新たな歴史を刻み始めていると言えるでしょう。今後の展開に注目が集まります。

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