ノーマン・フォスター

ノーマン・フォスター卿（Norman Foster, Baron Foster of Thames Bank）は、1935年イギリスのマンチェスターに生まれ、現代建築界を牽引する建築家、そして一代貴族です。マンチェスター大学とイェール大学で学び、建築技術者・思想家であるバックミンスター・フラーのもとで研鑽を積んだ後、リチャード・ロジャースとの共同作業を経て、1967年に自身の設計事務所フォスター・アソシエーツ（現フォスター・アンド・パートナーズ）を設立しました。

フォスター卿の名声を世界に知らしめたのは、1985年に完成した香港上海銀行本店ビルです。従来の柱や壁に頼らず、外側にむき出しになった鋼鉄フレームで超高層ビルを支えるという、革新的なハイテク[[建築]]は、世界中の建築家に衝撃を与えました。この成功を基盤に、1991年にはフランクフルトのコメルツ銀行本店ビルで、環境に配慮したエコロジカルな超高層ビルを実現。中央に吹き抜けのアトリウムを設け、周囲に柱のない開放的なオフィス空間を配置。さらに、フロアを複数に分割し、その間に日光と緑あふれるスカイガーデンを挟み込むことで、自然換気を実現するなど、先進的な環境設計を取り入れました。この手法は、その後もマレーシアのMBFタワー、ロンドンのロンドン市庁舎、セント・メリー・アクス30番地など、数々の建築物に継承されています。

フォスター卿の建築デザインは、初期の機械的なハイテク[[建築]]から、より崇高で親しみやすい、洗練されたモダニズム[[建築]]へと進化を遂げました。その功績は高く評価され、王立英国建築家協会が贈るスターリング賞を2度受賞（1998年：ダックスフォード帝国戦争博物館、2004年：セント・メリー・アクス30番地）、そして1999年には建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞を受賞するなど、数々の栄誉に輝いています。また、ナイト叙任、メリット勲章受章、一代貴族叙任など、その功績はイギリス政府からも高く評価されています。

しかし、その一方で、「スーパースター建築士」と揶揄され、他の建築士よりも優遇されているとの批判もあります。特に2000年に開通したミレニアム・ブリッジの構造上の問題による開通直後の閉鎖や、テムズ川に浮かぶ芸術家のアトリエ「クーパー・コレクション」の撤去申し立てなどは、多くの議論を呼びました。また、2004年には、フォスター卿の下で活躍したケン・シャトルワースが独立、新たな事務所を設立するなど、事務所運営についても課題がありました。

フォスター卿は、大林組との共同プロジェクトとして、高さ800m級の超高層ビル「ミレニアム・タワー」のコンセプトモデルを発表するなど、建築における探求は止まりません。建築以外の分野でも、高級ピアノメーカー・ファツィオリとのコラボレーションによるピアノデザインなど、幅広い活動を行っています。RIBAゴールドメダル、AIAゴールドメダル、高松宮殿下記念世界文化賞、アストゥリアス皇太子賞芸術部門など、建築以外の分野でも数々の賞を受賞しています。フォスター卿の建築作品群は、現代建築史に大きな足跡を残し、未来の建築家たちにも多大な影響を与えるでしょう。

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