セントールテクノロジー

セントールテクノロジー (Centaur Technology, Inc.) は、アメリカ合衆国テキサス州オースティンに開発拠点を構える、x86互換CPUの開発メーカーです。現在は台湾のVIA Technologies社の傘下にあり、主にVIA社製の産業用・組み込み向けx86互換SoCで使用されるCPUの設計や、GPUの演算器設計を担当しています。

歴史

1995年4月、アメリカの大手半導体メーカーIDT (Integrated Device Technology) の子会社として、グレン・ヘンリー、テリー・パークス、ダリウス・ガスキンズ、アル・佐藤の4名によって設立されました。1997年には、初の製品となるx86互換CPU「WinChipプロセッサ」を市場に投入しました。

1999年8月、台湾のVIA社は、Cyrix開発チームの離脱により次世代CPU開発が困難になったことを受け、IDTからセントールを5100万ドルで買収しました。この買収により、VIA社のx86 CPUコアは、従来のCyrixベースからWinChipベースへと切り替わりました。セントールは、VIA傘下として、「VIA C3」（2000年）、「VIA C7」（2005年）、「VIA Nano」（2008年）といった、VIAのx86互換CPUコアの設計を手がけました。

VIA本体が先端x86互換CPU開発から撤退した後、セントールは、VIAと上海市政府の合弁会社である中国の兆芯に対し、2013年よりIPコアの提供を開始しました。さらに、セントールは自社でも、x86-64アーキテクチャの「CNS」コアと、AIコプロセッサの「NCORE」を開発し、これらを組み合わせた世界初のx86-64互換AIプロセッサ（SoC）である「Centaur CHA」を2019年に発表しました。この「Centaur CHA」は、従来のx86プロセッサにAI処理能力を付加した画期的な製品として注目を集めました。

2021年11月4日(台湾時間)、インテル社がセントール社に1億2500万ドルを支払うことと引き換えに、セントールの従業員の一部がインテルに移籍することがVIAから発表されました。インテルへの移籍は希望制であり、セントールに残ることも可能とされています。この動きは、VIAグループにおけるx86開発の中心が兆芯に移ったことを示唆していると見られています。

セントールテクノロジーは、その設立から現在に至るまで、x86互換CPUの開発において重要な役割を果たしてきました。当初は独立した企業として、その後はVIA傘下として、常に最先端の技術を追求し、産業用および組み込み分野におけるCPUの進歩に貢献しています。また、近年ではAI技術にも積極的に取り組み、x86アーキテクチャとAI処理を融合させた革新的なプロセッサの開発に成功しています。

セントールの歴史は、x86 CPU市場の競争と技術革新の歴史でもあります。設立当初から独自のアーキテクチャ開発に取り組み、VIA傘下に入ってからは同社のCPUコア開発を支え、その後はAIプロセッサ開発にシフトするなど、時代の変化に対応しながら進化を続けています。

脚注

[外部リンク]
Centaur Technology（英語）
VIAテクノロジーズ（日本語）

もう一度検索