VIA Nanoとは？意味をやさしく解説 - サードペディア百科事典

VIA Nano (ヴィアナノ)とは

VIA Nanoは、台湾のVIA Technologies社が2008年5月に発表したCPU製品です。同社傘下のセントールテクノロジーによって設計され、開発コードネームはIsaiah (VIA) またはCNA/CNB/CNC/CNQ (Centaur) です。

特徴

アーキテクチャ: VIA C7の後継として登場し、VIA製x86互換CPUとして初めてアウト・オブ・オーダー実行とスーパースケーラ命令パイプラインを搭載しました。これにより、前モデルのC7から大幅な性能向上が実現しています。
拡張命令: SSE3命令やx64互換命令をフルサポートし、処理能力を向上させています。
マルチコア: 初期モデルでは非搭載でしたが、CNQコアにおいて初めてマルチコア化が実現されました。これはVIA製CPU初のマルチコア対応例です。
ハードウェア暗号化: AES暗号化エンジンPadLockによるハードウェア暗号化アクセラレーションをサポートし、セキュリティ性能も向上させています。
省電力: Adaptive PowerSaver技術により高度な省電力制御が可能で、アイドル時の消費電力は100～200mWと非常に低く抑えられています。
製造プロセス: 富士通の65nmプロセスルール (Nano 1000～3000シリーズ) とTSMCの40nmプロセスルール (Nano X2/VIA QuadCore) で製造されています。
互換性: パッケージはオンボード用のNanoBGA2のみで提供され、VIA C7とピン互換性があるため、既存のシステムへの置き換えが容易です。

モデルの進化

VIA Nano 3000シリーズ (CNC): 2009年11月に発表されたマイナーチェンジ版で、従来モデルに比べ、20%低い消費電力で20%高い性能を実現。CPU仮想化やSSE4命令にも対応。
VIA Nano X2 (CNQ) シリーズ: 2011年1月に発表されたデュアルコアCPUで、VIA Nano 3000をベースに開発。
VIA QuadCoreシリーズ: 同年5月に発表されたクアッドコアCPUで、Nano X2と同じダイを2つ搭載するMulti-Chip Module (MCM) 方式を採用。

自動オーバークロック機能

VIA Nanoプロセッサーには、消費電力や発熱に応じてクロックを引き上げる自動オーバークロック機能が搭載されており、シングルスレッド時の性能を向上させることができます。

主な仕様

ダイサイズ: 7.650mm x 8.275mm (63.3平方mm)
FSB: VIA V4 1333/1066/800MHz/533MHz
L2キャッシュ: 4/2/1MB (16-way set associative)
対応チップセット: CN896+VT8237S/VX900/VX900H/VN1000/VX11

製品ラインナップ

VIA Nanoの製品ラインナップは、用途に応じて以下の3つに大別されます。

1. デスクトップ・ノートPC向け (Lシリーズ)
VIA Nano 2000 シリーズ
VIA Nano 3000 シリーズ
VIA Nano Dual Coreシリーズ
2. 超低電圧CPU (SFFデスクトップ/UMPC向け) (Uシリーズ)
VIA Nano 1000/2000 シリーズ
VIA Nano 3000 シリーズ
VIA Nano DualCoreシリーズ
VIA QuadCoreシリーズ
3. 組み込み向け (Eシリーズ)
VIA Nano DualCoreシリーズ
VIA QuadCore Processor

各シリーズには、対応命令セットやプロセスルールが異なります。詳細は以下の通りです。

サポート命令セットとプロセスルール

シリーズ	サポート命令セット	プロセスルール
:-------	:----------------	:-----

VIA Nano 2000 シリーズ	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization (stepping 3 and higher)、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	65nm
VIA Nano 3000 シリーズ	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	65nm
VIA Nano Dual Coreシリーズ	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	40nm
VIA Nano 1000/2000 シリーズ	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization (stepping 3 and higher)、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	65nm
VIA Nano 3000シリーズ	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	65nm
VIA Nano DualCoreシリーズ	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	40nm
VIA QuadCoreシリーズ	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	40nm
VIA Nano DualCoreシリーズ (組み込み)	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	40nm
VIA QuadCore Processor (組み込み)	MMX、SSE、SSE2、SSE3、SSSE3、SSE4.1、x86-64、NXビット、VIA VT virtualization、VIA PadLock (SHA, AES, RNG)、VIA PowerSaver	40nm

競合製品との比較

Intel Atomとの比較: VIAの公式ウェブサイトでは、VIA NanoがIntel Atomと比較して、PCMark 05や3DMark2006などのベンチマークで高い性能を発揮すると主張しています。特に、1ワット当たりの性能で優位性を示しています。
AMD E-350との比較: VIA QuadCoreの発表会場では、AMD E-350と比較して高い性能を発揮すると発表されています。

ロードマップ

2014年7月には、VIA Nanoの後継CPUであるIsaiah IIのベンチマークが発表されました。

主な採用例

VIA Nanoは、コンシューマ向けの単体販売はされておらず、主にVIA社製の産業向けシステムボードに搭載されています。

ネットブック: 韓国サムスンのNC20や中国レノボのIdea Pad S12など、ネットブックにも採用されています。
シンクライアント: 日立製作所のシンクライアントにも採用されています。
サーバ製品: デルはVIA Nanoを採用したサーバ製品XS11-VX8を発表しました。
Thinclient: ヒューレット・パッカードのThinclientにも採用されています。
ベアボーンキット: ZOTACはVIA Nano X2を採用したベアボーンキットZBOXNANO- VD01を発売しました。

脚注

VIA Nano ホワイトペーパー
VIA Nano
VIA Global Mobility Bazaar Alliance

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