セヴンス・サイン

1994年、ギターヒーローとして世界に名を馳せるイングヴェイ・マルムスティーンは、通算7作目となるスタジオ・アルバム『セヴンス・サイン』（原題：The Seventh Sign）を世に送り出しました。前作『ファイアー・アンド・アイス』から約2年ぶりのリリースとなった本作は、当時の彼の音楽的方向性を示す重要な作品として位置づけられています。

本作の制作における大きなトピックの一つが、ヴォーカリストの起用です。このアルバムでは、元ラウドネスのシンガーとして知られるマイク・ヴェセーラが新たに迎えられました。ヴェセーラのパワフルかつ伸びやかな歌声は、イングヴェイのテクニカルなギターサウンドと融合し、独特のケミストリーを生み出しています。しかし、このヴォーカリスト選定は容易な道のりではなかったことが伝えられています。イングヴェイは、自身の音楽に合う最高のシンガーを見つけるため、数多くの著名なヴォーカリストと接触やセッションを行ったと語られています。その候補者には、ドン・ドッケン、ロニー・ジェイムス・ディオ、イアン・ギラン、スティーヴ・ペリーといったロック界のレジェンドや、ケリー・キーリングなどの実力派、さらに過去に自身のバンドに在籍したジョー・リン・ターナー、ジェフ・スコット・ソート、マーク・ボールズといった面々が含まれていました。激しい選考の末、最終的にマイク・ヴェセーラが決定し、彼の歌唱によってアルバムは完成に至りました。

アルバムの音楽性は、イングヴェイの真骨頂であるネオクラシカルメタルが色濃く反映されています。リリース当時の日本盤帯には「究極のクラシカル・フレイバー!イングヴェイの最高傑作、ついに完成!」というコピーが記されており、その完成度の高さと音楽性への自信がうかがえます。クラシック音楽にインスパイアされた流麗なメロディラインと、驚異的な速弾きを駆使したギタープレイが全編にわたり展開され、リスナーをイングヴェイ独自の世界観へと引き込みます。叙情的なアコースティックナンバーから、疾走感あふれるヘヴィな楽曲まで、多彩な楽曲が収録されており、彼のギタリストとしての才能が遺憾なく発揮された作品と言えるでしょう。

また、『セヴンス・サイン』は、そのジャケットデザインを巡る逸話でもファンの間で知られています。このアルバムのアートワークは、欧米盤と日本盤とで全く異なるデザインが採用されました。特に日本盤のデザインに対して、イングヴェイ本人は強い不満を抱いていたと伝えられています。日本盤のジャケットには彼の顔写真が大きく使われていましたが、鼻の部分に三角のマークが描かれているのを見たイングヴェイは「俺の顔に勝手にこんな変なものを描きやがって」と激怒したと語られています。アーティストの肖像に対するこだわりと、レコード会社のマーケティング戦略との間で生じた興味深いエピソードであり、アルバムリリースの背景を物語る一幕です。一方、欧米盤のジャケットは、より抽象的で神秘的なイメージのアートワークとなっています。

このアルバムのサウンドを作り上げた主要な参加メンバーは、イングヴェイ・マルムスティーン自身（エレクトリックギター、アコースティック・ギター、エレクトリックベース、フレットレスベース、シタール、ヴォーカル）、ヴォーカルのマイク・ヴェセーラ、キーボードのマッツ・オラウソン、そしてドラムスのマイク・テラーナです。イングヴェイはメイン楽器であるギターに加え、ベースやエキゾチックなシタール、さらには一部ヴォーカルも担当するなど、マルチプレイヤーとして楽曲制作に深く関与しています。カバーアートはRich DiSilvioが担当しました。

『セヴンス・サイン』は、新たなヴォーカリストとの出会い、そして制作を巡る様々なエピソードを経て完成した、イングヴェイ・マルムスティーンのキャリアにおいて重要な転換期を象徴する作品です。その卓越した音楽性と話題性に加え、ネオクラシカルメタルの傑作として、今日に至るまで世界中のロックファンに聴き継がれています。

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