ゼラ・ヤコブ・アムハ・セラシエ

ゼラ・ヤコブ・アムハ・セラシエ

ゼラ・ヤコブ・アムハ・セラシエ氏は、1953年8月17日に生まれた人物です。彼はエチオピア最後の皇帝であるハイレ・セラシエ1世の孫であり、その皇太子であったアスファ・ウォッセン（後に亡命皇帝アムハ・セラシエ1世となる）の息子にあたります。

生涯

若い頃、ゼラ・ヤコブ氏はイギリスへ留学し、名門イートン・カレッジで学びました。その後、オックスフォード大学のエクセター・カレッジで高等教育を受け、さらにサンドハースト王立陸軍士官学校で軍事訓練を受けました。これらの教育期間中、彼の人生はエチオピア国内の激変に直面します。

1974年の初頭、父であるアスファ・ウォッセン皇太子の健康状態が脳卒中により悪化し、予断を許さない状況となりました。これを受け、祖父であるハイレ・セラシエ1世は、イギリスに滞在していたゼラ・ヤコブ氏を皇太子代行、そして皇位継承者として指名しました。しかし、同年中にエチオピアでは革命が発生し、帝政は崩壊しました。これにより、ゼラ・ヤコブ氏が実際に帝位に就くことはありませんでした。

帝政崩壊後、ゼラ・ヤコブ氏はエチオピアに戻ることなく、亡命生活を送ることになります。1970年代にオックスフォード大学を卒業した彼は、一時的にアメリカ合衆国で銀行員として勤務しましたが、その後ロンドンへ拠点を移しました。ロンドンではヌヌ・ゲタネ王女と結婚し、一女リデタ王女をもうけましたが、後に離婚しています。当時の彼は、ロンドンのドッグス島に比較的控えめな住居を構えていたとされます。

1989年4月、ロンドンに暮らすエチオピア人コミュニティからの推戴を受けて、父アスファ・ウォッセン氏が「エチオピア亡命皇帝」として即位し、ゼラ・ヤコブ氏がその相続人に指名されました。これは、もはや帝政が存在しない中での象徴的な出来事でした。

1992年、父アムハ・セラシエ氏がアメリカ合衆国バージニア州で健康診断を受けることになった際、ゼラ・ヤコブ氏も付き添って渡米しました。ところが、滞在中に父が再び脳卒中で倒れたため、彼はそのまま2年間アメリカに留まることになりました。1997年に父がアメリカで死去した後、彼は喪主を務めるためにエチオピアへ向かうビザを申請しましたが、以前に2年間滞在していたことが理由となり、この申請は却下されました。

1997年2月17日、エチオピア帝冠評議会からの推戴を受け、ゼラ・ヤコブ氏はエチオピア帝室（ソロモン朝）の家長に就任しました。これは、エチオピア帝室の象徴的指導者としての役割を果たすものです。現在は、故国エチオピアの首都アディスアベバに居住しています。

家長としての活動と並行して、彼は社会的な役割も担っています。2002年からは、エチオピアの平和構築を目指すエチオピア平和財団（EPF）の事務局長を務めています。

ゼラ・ヤコブ氏の次に帝位継承権を持つとされる法定推定相続人は、彼の叔父である初代ハラール公爵マコンネン・ハイレ・セラシエ王子の息子、すなわちゼラ・ヤコブ氏にとって従兄にあたる人物が担っています。長らくこの地位にあったパウルス・ウォッセン・セゲド王子（第2代ハラール公）は2021年に亡くなりました。その後、その弟であるミカエル・アムデ・イエソース王子が第3代ハラール公となり、帝位継承者の地位を引き継いでいます。

栄誉

ゼラ・ヤコブ氏は、いくつかの国際的な栄誉を受けています。

聖ラザロ騎士団ナイト・グランド・クロス（フランス王室関連）
聖アンデレ騎士団ナイト・グランド・コルドン（ロシア王室関連）
ロイヤル・オブ・ドラム勲章ナイト・グランド・カラー（ルワンダ王室関連）
グルジア鷲勲章

エチオピア帝政は過去のものとなりましたが、ゼラ・ヤコブ氏は帝室の家長として、また平和財団の事務局長として、その血筋と経験に基づいた活動を続けています。

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