ゼロデュア

ゼロデュア：驚異的な低膨張性ガラスセラミックス

ゼロデュアは、ドイツのショット社が開発した、非常に熱膨張係数の低いガラスセラミックスです。その特性から、精密機器や光学機器において高い評価を得ています。

ゼロデュアの組成と特性

ゼロデュアは、結晶質のケイ素酸化物と非晶質の酸化ケイ素を組み合わせた複合材料です。この特殊な構造により、0～50℃の温度範囲で熱膨張係数が0.02×10⁻⁶/Kという極めて低い値を実現しています。これは、温度変化による寸法変化が非常に小さいことを意味し、高精度が要求される用途に最適です。

ゼロデュアは白色で、均質性に優れ、加工性も良好です。研磨やメッキも容易であり、様々な形状に加工することができます。また、ヘリウムの透過率が低いため、レーザージャイロなどの特殊な用途にも利用されています。さらに、化学的に安定しており、長期間にわたってその特性を維持します。

ただし、ゼロデュアの熱膨張曲線は完全にフラットではなく、熱膨張率を正確に予測することが難しいという欠点も存在します。このため、大型の一枚板を溶接によって製造することは困難です。

製造工程

ゼロデュアの製造には、高度な技術と時間が必要となります。溶解、徐冷、セラミゼーションといった工程を経て、最終的な製品が完成します。例えば、超大型望遠鏡VLTに使用されている直径8.2m、厚さ177.9mmの鏡材の製造には、溶解に24日、徐冷に3～4ヶ月、セラミゼーションに8ヶ月もの期間を要したとされています。

主要な用途

ゼロデュアの優れた特性は、様々な分野で活用されています。

光学分野: 反射望遠鏡の鏡材として広く利用されています。温度変化による鏡の変形が非常に小さいため、高精度な観測を実現します。特に、大型望遠鏡ではその効果が顕著です。
半導体製造: マイクロリソグラフィにおいて、半導体ウェハーの位置決めや搬送機構に使用されています。EUV露光装置の反射鏡にも利用され、微細加工技術の高度化に貢献しています。
* 計測技術: 低膨張率と長期安定性から、計測装置の基準器の材料として利用されています。精密な計測を必要とする様々な用途で、その信頼性と安定性が評価されています。

ゼロデュアの物理的特性

ゼロデュアと他の低膨張材料

ゼロデュア以外にも、ULE（超低膨張ガラス）、セルビットなどの低膨張材料が存在します。これらの材料はそれぞれ特性が異なり、用途によって最適な材料を選択する必要があります。例えば、セルビットはヘリウムを透過するため、レーザージャイロには適していません。

まとめ

ゼロデュアは、その卓越した低膨張性、均質性、加工性から、高精度が求められる様々な分野で重要な役割を果たしています。今後も、科学技術の発展とともに、ゼロデュアの更なる応用が期待されます。

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