ソビエト連邦の国章

ソビエト連邦の国章：変遷と影響

ソビエト連邦の国章は、1923年から1991年のソ連崩壊まで使用された象徴的なエンブレムです。地球儀の上に配置された鎌と槌を、麦の穂のリースで囲んだデザインが特徴的でした。紋章学の厳格なルールには従っておらず、紋章というよりはエンブレムと呼ぶ方が正確でしょう。これは、ロシアの伝統的な紋章制定の体系とは異なる手法で作られたためです。

多様な変遷：構成共和国の変化と国章のデザイン

ソビエト連邦を構成する共和国の数は、歴史を通して大きく変動しました。この変化は、国章のデザインにも反映されています。

1923年から1936年: ロシア革命後の最初の国章は、1923年に制定されました。赤地に国章が配された国旗と共に、ソビエト連邦中央執行委員会の会合で承認されました。その後、憲法草案に合わせ、最終案が決定されました。

1936年から1946年: ザカフカース連邦共和国の解体や、中央アジア地域の編入により、構成共和国は11カ国に増加しました。このため、国章のデザインも変更されました。「万国の労働者、団結せよ！」というスローガンが、新たにアゼルバイジャン語、トルクメン語、ウズベク語、タジク語、カザフ語、キルギス語（ラテン文字表記）を含む11言語で表記されるようになりました。

1946年から1956年: 第二次世界大戦後、ソビエト連邦の領土は拡大し、構成共和国は16カ国となりました。これを受けて、1946年に国章は再び変更され、エストニア語、ラトビア語、リトアニア語、モルドバ語、フィンランド語が追加され、「万国の労働者、団結せよ！」のスローガンは16言語で表記されるようになりました。また、一部言語の表記文字はラテン文字からキリル文字に変更されました。

1956年から1991年: 1956年、カレロ＝フィン共和国がカレリア自治共和国に降格したことで、フィンランド語表記のスローガンが国章から削除されました。その後、ベラルーシ語表記にも修正が加えられ、このデザインがソ連崩壊まで使用されました。

ソビエト連邦国章の影響

ソビエト連邦の国章は、構成共和国だけでなく、世界中の共産主義国家にも大きな影響を与えました。多くの国が、ソビエト連邦の国章と類似したデザインの国章や国旗を採用しました。

ソ連構成国: ソ連の構成共和国や自治共和国は、ソ連の国章に似たデザインの国章を制定していました。しかし、ソ連崩壊後、多くの国が独立前の国章を復活させたり、独自の新しい国章を制定したりしました。ベラルーシは例外で、独立後しばらくは独立期のデザインの国章を使用していましたが、後にソ連時代の国章を基にしたデザインに変更されました。

東欧諸国: 東欧の共産主義国家も、ソビエト連邦国章のデザインを参考にした国章や国旗を採用していました。赤い星、鎌と槌、麦の穂などのモチーフが共通して見られます。しかし、1989年の東欧革命後、これらの国は多くが共産主義時代のシンボルを削除した新しい国章を採用しました。

まとめ

ソビエト連邦の国章は、単なる国家の象徴を超え、ソ連の歴史、政治体制、そして周辺諸国への影響を反映した重要なデザインでした。その変遷は、ソビエト連邦の領土拡大と政治的変化を如実に物語っています。また、そのデザインは、世界中の共産主義国家の国章デザインに大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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