ソマリア暫定国民政府

ソマリア暫定国民政府（TNG）とは

ソマリア暫定国民政府（Transitional National Government, TNG）は、ソマリア内戦の終結と国家再建を目指して2000年に設立された臨時政府です。しかし、多くの氏族が協力せず、反対組織が結成されるなど、その道のりは困難を極めました。2004年、暫定国民政府は多くの反対組織と和解し、暫定連邦政府（Transitional Federal Government, TFG）へと移行し、その役割を終えました。

設立の背景

1988年のオガデン戦争での敗北後、ソマリアでは氏族間の対立が激化し、内戦へと発展しました。内戦は泥沼化し、有力軍閥が内部分裂を繰り返す状況が続きました。しかし、1990年代後半になると、ソマリア北東部がプントランドとして独立を宣言するなど、徐々に秩序回復の兆しが見え始め、ソマリア再統一への機運が高まりました。

ジブチ会議の開催

ソマリア和平を目指し、1999年3月から4月にかけて、ジブチ大統領イスマイル・オマル・ゲレの提唱により、政府間開発機構（IGAD）主催のソマリア和平会議がジブチで開催されることになりました。ジブチが選ばれたのは、ソマリ語話者が多かったためです。この会議は、ソマリア国民和平会議（Somalia National Peace Conference, SNPC）と名付けられ、後に「ジブチ会議」と呼ばれるようになりました。

会議の難航

ジブチ会議には、ソマリア各地の有力団体（主に軍閥）の代表が招かれましたが、ソマリランドやプントランドといった国内の有力勢力は参加しませんでした。また、暫定国民政府の目標が連邦制よりも中央集権制に近かったため、協力を拒否する団体も多く存在しました。さらに、発表された暫定国民憲章の内容に矛盾があったことも、混乱を招いた一因とされています。

暫定国民政府の成立

2000年8月20日、アブダラー・イサーク・ディーロウが暫定国民議会議長に選任され、8月27日にはアブディカシム・サラ・ハッサンが大統領に指名され、正式に暫定国民政府が成立しました。首都はバイドアに置かれることが決定し、10月8日にはアブディカシム大統領がアリ・カリフ・ガライドを首相に任命しました。

国際社会の反応

アブディカシム大統領は就任後、エチオピアを訪問しましたが、エチオピアは暫定国民政府に不参加のプントランドとの関係を重視し、暫定国民政府の承認を見送りました。

対立組織SRRCの成立と内戦の激化

2001年2月末、暫定国民政府に反対する有力団体の一部がケニアのナイロビで会議を開き、3月末にはソマリア和解復興委員会（SRRC）が結成されました。SRRCは、ソマリ国民同盟やラハンウェイン抵抗軍などの有力団体が参加し、外国の干渉を排除したソマリアの再建を訴えました。

武力衝突の頻発

その後、ジブチが暫定国民政府を、エチオピアがSRRCを支援する構図となり、両勢力間の武力衝突が頻発しました。2001年5月には、ラハンウェイン抵抗軍と暫定国民政府側勢力の間で戦闘が勃発し、多数の死傷者が出ました。また、暫定国民政府がアルカイダと繋がりがあるとの疑惑も浮上し、SRRCは暫定国民政府を「イスラム原理主義的であり、一部氏族からのみ支持されている」と非難しました。

和解交渉と暫定連邦政府への移行

2002年以降、ケニアなどで暫定国民政府とSRRCとの間で和平交渉が行われましたが、なかなか合意に至りませんでした。しかし、IGADの仲介により、2004年1月には暫定国民政府が暫定憲章の改正に合意し、2月には暫定国民議会もこれを了承しました。

2004年8月22日、新たな制度に基づく議会である暫定連邦議会が発足し、暫定国民議会は解散しました。そして、10月10日に行われた暫定大統領選挙でアブドゥラヒ・ユスフが当選し、暫定国民政府は完全に終了し、暫定連邦政府へと移行しました。

主要メンバー

議会議長：
アブダラー・イサーク・ディーロウ（初代）
ムスタファ・グドウ（第2代）
大統領：アブディカシム・サラ・ハッサン
首相：
アリ・カリフ・ガライド（初代）
ハッサン・アブシル・ファラー（第2代）
モハメド・アブディ・ユスフ（第3代）

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