ソマリ語

ソマリ語：アフリカの角に根付く言語とその多様な側面

ソマリ語は、アフリカ大陸東部のアフリカの角と呼ばれる地域で広く話されている言語です。アフロ・アジア語族クシ諸語に属し、ソマリアを主な母語とするソマリ族の人々によって使用されています。ソマリア、ソマリランドに加え、エチオピアのソマリ州、ジブチ、ケニア北東部といった地域が主な使用地域ですが、ソマリア内戦の影響で、世界各地にソマリ語話者が散らばっているため、正確な話者数の把握は困難です。推計では、移民を含め1500万人から2100万人の話者がいるとされています。

ソマリ語の文法的特徴

ソマリ語は、膠着語に分類される言語です。語幹に様々な接辞が付加されることで、文法的な意味が表現されます。また、主題優勢言語としての側面も持ち、文頭に主題を示す指示語（例：「baa」、「ayaa」、「waxaa」）が用いられる点が特徴的です。これは、日本語の「は」に相当する機能を果たします。動詞の人称変化も存在し、主語、目的語、状況などに応じて複雑な変化を見せます。名詞には性があり、単数と複数で形態変化することもあります。

方言の多様性

ソマリ語には複数の主要な方言が存在し、大きく北部方言、ベナーディル方言、マーイ方言に分類されます。標準ソマリ語は主に北部方言を基礎として成立しましたが、ベナーディル方言（沿岸地方で使われる）の要素も取り入れられています。一方、マーイ方言はソマリア南部で使われる方言で、他の方言と比較して独自の特性が強く、相互理解が難しいとされるケースもあります。子音体系の違いなどがその要因として挙げられます。これらの主要方言に加え、ジーボ方言、ダバレ方言など、標準語から大きく異なる方言も存在しています。

音韻体系

ソマリ語の音素は22個とされています。母音は基本となる5母音があり、さらに長短の区別、舌の位置（前舌、後舌）の違いによって、より多くの音素が構成されています。声調も高く、低く、下降するなど3種類存在し、意味を区別する上で重要な役割を果たしています。

語彙

ソマリ語の語彙には、歴史的な文化的背景を反映した借用語が多く見られます。古くからアラビア語、ペルシア語からの借用語が多数あり、近世以降は、旧宗主国であるイタリア語や英語の影響も顕著です。ソマリ族の多くがイスラム教スンナ派であることから、アラビア語の影響は特に大きいと言えます。標準ソマリ語の制定に伴い、教育目的で新たに作られた語彙も存在します。

表記法の歴史と標準化

ソマリ語には、ラテン文字、アラビア文字、独自の文字体系など、様々な表記法が用いられてきました。現在、最も広く使用されているのはラテンアルファベットによる表記法です。1972年にバーレ政権によって公式に採用され、言語学者シャイア・ジャマ・アフメドの貢献が大きかったとされています。この表記法では、p、v、zを除くラテンアルファベットの文字が使用され、追加の記号は声門破裂音を表すアポストロフィ程度です。

ラテン文字表記法の採用に至るまでには、1960年代から9年間にわたる議論がありました。複数の言語学者が表記法案を提案し、最終的にシャイア・ジャマ・アフメドの案が選ばれ、彼の著書『Af Soomaali』は表記法の解説書として重要な役割を果たしました。彼は、ラテンアルファベットの簡潔さ、既存の機器との適合性などを採用理由として挙げています。

ラテン文字以前には、アラビア文字表記が広く用いられており、ワダード記法などが知られています。20世紀には、オスマニャ文字、ボラマ文字、カッダレ文字といった独自の文字体系も考案されましたが、ラテン文字表記の普及に伴い、それらの使用は減少しています。

近年の歴史と発展

イタリアやイギリスによる植民地時代以前から、アラビア語がソマリ族の教養層や宗教家によって書き言葉として用いられていたという歴史があります。20世紀初頭の反乱指導者、サイイド・ムハンマド・アブドゥラー・ハッサンもアラビア語で書簡を残しています。1972年10月10日には、標準ソマリ語がモガディシュで公表され、1976年には最初のソマリ語辞書が出版されました。バーレ政権は、公務員試験や教育政策を通じてラテン文字表記の普及に努め、短期間でその普及を達成しました。これは世界的に見ても珍しい事例です。

参考文献

ソマリ語に関する研究は、日本語、英語など様々な言語で出版されています。具体的な書籍名や学術論文などは、本文中で一部紹介しています。より詳細な情報については、それぞれの参考文献を参照してください。

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