ソユーズ13号

ソユーズ13号（Soyuz 13, ロシア語: Союз 13）は、1973年12月18日に打ち上げられたソビエト連邦の有人宇宙飛行ミッションです。この飛行は、前年に導入された改良型宇宙船ソユーズ7K-Tの2度目の試験飛行という技術的な目的と同時に、ソ連にとって初めての本格的な科学研究を主目的とした画期的なミッションでした。また、宇宙飛行の司令は、カリーニングラードに新設されたミッションコントロールセンターから初めて発信されたことでも知られます。

ソユーズ13号のために、宇宙船は特別な改修が施されました。先行するソユーズ12号にはなかった、ミッション期間を延長するための太陽電池パネルが増設されました。さらに、通常のドッキング装置は取り外され、その代わりに軌道モジュール部分には、大型の紫外線天文台「オリオン2」が搭載されました。ミッション時の宇宙船の質量は6,560 kgでした。地球周回軌道は、近点が188 km、遠点が247 km、軌道傾斜角は51.6度、軌道周期は88.8分でした。

搭乗した乗組員は、船長のピョートル・クリムク宇宙飛行士と、フライトエンジニアのワレンティン・レベデフ宇宙飛行士の二人です。両名にとって、これが記念すべき初の宇宙飛行となりました。ミッションのバックアップクルーにはLev VorobiyovとValeri Yazdovskyが、リザーブクルーにはウラジーミル・コワリョーノクとYuri Ponomaryovが控えました。

ソユーズ13号の最も重要な科学的活動は、軌道上に設置された天文台「オリオン2」を用いた観測でした。オリオン2は、アルメニアの有名な天体物理学者グリゴール・グルザディアン博士が設計し、宇宙空間ではフライトエンジニアのレベデフ宇宙飛行士がその操作を担当しました。この天文台は、口径240mm、焦点距離1,000mmの広角望遠鏡と、高精度なスペクトログラフを組み合わせて構成されていました。主な目的は、地球大気に吸収されて地上からは見えない紫外線の波長域で、最大13等級という暗い恒星からの光のスペクトルを詳細に分析することでした。スペクトログラフは、200nm、250nm、300nmの波長において、それぞれ17nm/mm、28nm/mm、55nm/mmという分解能で観測を行いました。

オリオン2による宇宙からの紫外線観測は、天文学に多くの新たな知見をもたらしました。特に重要な成果の一つは、ぎょしゃ座にある惑星状星雲IC 2149からの紫外線スペクトルグラムを初めて取得したことです。このデータ分析により、これまでこの種の天体では観測されたことがなかったアルミニウムやチタンの原子から放出されるスペクトル線が存在することが明らかになりました。また、この惑星状星雲や、ぎょしゃ座の近くに位置する大きな星団からの光に、特定の波長で光子が吸収されていることを示す2本の吸収線も発見されました。さらに、オリオン2は、1973年当時大きな注目を集めていたコホーテク彗星（C/1973 E1）の紫外線観測にも成功し、その組成や構造に関する貴重なデータを提供しました。

宇宙天文観測の他にも、ソユーズ13号では多様な科学実験が行われました。これには、前年のサリュート宇宙ステーションの技術的な課題を解決するための実験も含まれていました。乗組員は、マルチスペクトルカメラを用いて地球の大気や表面、特に汚染状況を観測し、リモートセンシング技術の可能性を探りました。また、オリオン2に付随して搭載されていた閉鎖生態系システムを試験し、宇宙空間でのバイオマス生産能力を評価しました。この実験では、培養された藻類から元の量の30倍にもなるタンパク質を収穫することに成功し、将来的な長期宇宙滞在における食糧生産システムの実現に向けた基礎データを得ました。加えて、宇宙環境が人体に与える影響を調べる医学試験も実施され、特に脳への血流量の変化などが詳細に測定されました。

約8日間のミッションを終えたソユーズ13号は、1973年12月26日に地球へ帰還しました。着陸地点はカザフスタンのカラガンダ南西約200kmの平原でした。この日は激しい雪嵐に見舞われる悪天候でしたが、ソユーズ宇宙船は無事地上に降り立ち、搭乗していた二人の宇宙飛行士も無事生還しました。ソユーズ13号ミッションは、ソ連の有人宇宙開発において、技術試験から科学探査へとその焦点を広げた、極めて重要な一歩となったフライトと言えるでしょう。

もう一度検索