ソユーズ30号

ソユーズ30号ミッション解説

1978年、ソビエト連邦は宇宙開発計画の一環として、有人宇宙船「ソユーズ30号」を打ち上げました。このミッションは、軌道上に建設された宇宙ステーション「サリュート6号」を訪れることを目的としており、同ステーションへのドッキングとしては通算5度目の成功事例となりました。ソユーズ30号の飛行は、インターコスモス計画（ソ連と友好国の協力による宇宙開発計画）の第2弾としても位置づけられています。

搭乗クルー

ソユーズ30号に搭乗したのは、以下の2名の宇宙飛行士です。

船長: ピョートル・クリムク
彼はこれが2度目の宇宙飛行経験となりました。
リサーチコスモノート: ミロスワフ・ヘルマシェフスキ
特筆すべきは、彼がポーランド出身であり、このミッションによってポーランド人として初めて宇宙空間に到達した人物となったことです。ヘルマシェフスキ氏にとっては、これが初の宇宙飛行でした。

彼らのバックアップクルーとしては、船長候補にワレリー・クバソフ氏、フライトエンジニア候補にゼノン・ヤンコフスキ氏が選ばれていました。

軌道上での活動

ソユーズ30号は、1978年6月27日に宇宙へと旅立ち、打ち上げから2日後の6月29日にサリュート6号ステーションへのランデブーおよびドッキングに成功しました。ステーション内部では、ソユーズ29号で先行して約12日前から長期滞在ミッションを行っていたウラジーミル・コワリョーノク氏とアレクサンドル・イワンチェンコフ氏の両宇宙飛行士が彼らを迎え入れました。これにより、一時的にサリュート6号には合計4名の宇宙飛行士が滞在することとなり、これは当時、軌道上の施設に4人が集結した3番目の事例となりました。

ソユーズ30号の乗組員には、いくつかの科学実験や観測任務が割り当てられていましたが、ステーションに長期滞在しているソユーズ29号クルーの主な業務に支障をきたさないよう、彼らの活動範囲や内容は比較的限定されました。主にソユーズの帰還モジュール内や、ステーション内の特定の区画で実験を行う必要がありました。

このような制約がある中でも、リサーチコスモノートのヘルマシェフスキ氏は積極的に様々な実験に取り組みました。中でも注目されたのは、微重力環境下での材料科学に関する実験です。彼は、赤外線検出器などに用いられる半導体材料であるカドミウム-テルル-水銀の結晶生成を試みました。地上での同様の実験では約15%程度の収率が一般的ですが、宇宙空間で行われたこの実験では、47グラムの結晶から50%という驚異的な収率を達成し、微重力環境の材料科学における可能性を示す重要な成果を得ました。

また、ソユーズ30号のクルーは、地上の観測に用いられる高解像度マルチスペクトルカメラ「MKF-6M」の使用に関する訓練を受けていました。この訓練の一部は、高度10kmを飛行する航空機（Tu-134）内で行われ、宇宙からの観測環境が模擬されました。軌道上からは、ヘルマシェフスキ氏が母国ポーランドの上空を撮影する試みも行われましたが、残念ながら天候が悪く、鮮明な画像は得られませんでした。しかし、地球を覆う雲の様子や、神秘的なオーロラの撮影には成功しました。

医学研究もミッションの重要な要素でした。ヘルマシェフスキ氏は自身の肺活量を測定したり、運動中や与圧服を着用した状態での体温変化を記録したりするなど、微重力環境が人体に与える影響に関するデータ収集を行いました。さらに、ソユーズ30号とソユーズ29号の全4名の宇宙飛行士が参加し、無重力下で食物の味覚がどのように変化するのかを調べる共同実験も実施されました。

地球への帰還

軌道上での任務を終えたソユーズ30号の乗組員は、実験で得られたデータやサンプルを丁寧にカプセルに収納しました。そして、1978年7月5日の早朝、宇宙船は地球大気圏に再突入し、カザフスタンの首都アスタナから西へ約300km離れた農場地帯に無事着陸しました。

ソユーズ30号ミッションは、初のポーランド人宇宙飛行士の誕生という歴史的な意義に加え、長期滞在クルーとの軌道上での連携、そして材料科学、医学、地球観測といった多岐にわたる分野での貴重な科学的知見をもたらしました。これは、ソ連主導の国際協力による有人宇宙活動であるインターコスモス計画における、確かな一歩を示すミッションとなりました。

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