ソリッドレコード夢のアルバム

『ソリッドレコード夢のアルバム』は、1988年にインディーズレーベルのソリッドレコードからリリースされた、他に類を見ないコンセプトのコンピレーション・アルバムです。当時、60年代歌謡の研究誌『季刊リメンバー』を編集・発行していた高護が中心となり制作されました。

このアルバムの最大の特徴は、ニュー・ウェイヴシーンで活躍していた20代の若手アーティストたちが、1970年前後に一世を風靡したベテラン歌手たちとタッグを組み、パスティーシュ的な歌謡曲を創り上げた点にあります。単なる懐古趣味ではなく、現代的な解釈と斬新なアレンジによって、歌謡曲の新たな可能性を追求した意欲作と言えるでしょう。

作詞は全曲、パール兄弟のサエキけんぞうが担当。作曲には、パール兄弟の窪田晴男、ビブラストーンの沖山優司、Pizzicato Fiveの高浪慶太郎と小西康陽、ザ・ファントムギフトのチャーリー森田、クールスのジェームス藤木、元VOICEの大木雄司、元WITHの中崎英也、ゲルニカの上野耕路、音楽プロデューサーの平井夏美、そして後に「おさかな天国」で大ブレイクする柴矢俊彦といった、豪華な面々が名を連ねています。

歌唱を担当した歌手も、奥村チヨ（「恋の奴隷」）、平山みき（「真夏の出来事」）、泉アキ（「夕焼けのあいつ」）、渚ゆう子（「京都慕情」）、山本リンダ（「どうにもとまらない」）、青木美冴（「うれしい体験」）、シンガーズ・スリーの伊集加代、元ワールド・スタンダードの大内美貴子と、まさに豪華絢爛。

各楽曲は、参加アーティストたちの個性が光る、バラエティ豊かな仕上がりとなっています。例えば、奥村チヨが歌う「恋のエクリチュール」は、沖山優司が作曲・編曲を手掛け、柴矢俊彦が管弦アレンジを加えた、ドラマチックな一曲。平山みきが歌う「アンブレラの香り」は、高浪慶太郎が作曲・編曲を担当し、都会的で洗練された雰囲気を醸し出しています。また、泉アキ WITH ザ・ファントムギフトによる「ドゥビ・ドゥビ」は、チャーリー森田の作曲とザ・ファントムギフトの演奏が、泉アキのパワフルなボーカルを 더욱引き立てています。

その他、パール兄弟の演奏によるハルヲ&パール「涙のサスピション」、青木美冴「夢みるハイウェイ」、渚ゆう子「スカンジナビアの白い夏」、サエキ・小西・高浪によるPPS (Pearl Pizzicato Special)「アニマ・プリズミィ」、山本リンダ「バタフライ」、平山三紀「朧月千夜一夜」など、聴きどころ満載の楽曲が収録されています。

演奏には、倉橋定良、坂上暁生、今井裕、棚沢雅樹、鎌田一夫、上村寛、村上公庸、美尾洋乃、美尾洋香、鈴木千夏、スティーヴ・衛藤らが参加。エンジニアは石井秀樹、ディレクターは高護と沖山雄司が務めました。ライナーノーツは近田春夫が執筆しており、彼のお気に入りはハルヲ&パール「涙のサスピション」であると語っています。

『ソリッドレコード夢のアルバム』は、歌謡曲への愛情とリスペクト、そして新たな音楽への挑戦が融合した、唯一無二の作品です。歌謡曲ファンはもちろん、ニュー・ウェイヴやJ-POPファンにも、ぜひ聴いていただきたい一枚です。

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