ソルジャー・ブルー (映画)

西部劇の転換点となった問題作『ソルジャー・ブルー』

1970年公開のアメリカ映画『ソルジャー・ブルー』は、ラルフ・ネルソン監督による西部劇作品です。同時期に公開された『小さな巨人』と共に、西部劇における新たな転換点を示した重要な作品として位置づけられています。

本作は、1864年にコロラド州で発生したサンドクリークの虐殺という米国史における暗い一章を克明に描いています。この虐殺は、後にベトナム戦争におけるソンミ村事件と重ね合わせられ、戦争の残虐さと、その背後にある人々の苦悩を浮き彫りにした反戦映画としても解釈されています。

壮絶な逃避行と悲劇の連鎖

物語は、北軍の現金輸送隊がシャイアン族の襲撃を受ける場面から始まります。生き残ったのは、クレスタ・リーという女性と、ホーナスという新兵の二人だけでした。クレスタは、これまで2年間シャイアン族と共に暮らしており、彼らに対する偏見や誤解を払拭しようとする人物です。

ホーナスは軍人としての義務感から砦を目指しますが、道中でクレスタと行動を共にするうちに、彼女のシャイアン族に対する深い理解と共感、そしてたくましい生き様を目の当たりにします。クレスタは、シャイアン族の行動を「生き残るため」という視点から理解し、彼らの残酷さという世間の通説に疑問を呈します。

二人は道中で、インディアンへの武器密売人に出くわします。密売人の言葉から、シャイアン族が北軍の現金を奪ったのは武器を購入するためだと推測したホーナスは、その事実を砦に届けようとします。彼はクレスタの説得を無視し、武器を積んだ馬車を破壊しますが、密売人に襲われ負傷してしまいます。クレスタの機転によって難を逃れますが、ホーナスは行動不能に陥ってしまいます。

ホーナスを救うため、クレスタは単身砦に向かいます。しかし、そこで彼女は北軍がシャイアン族への大規模攻撃の準備をしていることを知ります。クレスタはシャイアン族の集落に戻り、この事実を伝えます。シャイアン族のリーダーであるまだら狼は、アメリカ国旗と白旗を掲げて北軍を迎えることを提案しますが、北軍はこれを無視して、集落への無差別攻撃を開始します。この悲惨な虐殺は、歴史に「サンドクリークの虐殺」として刻まれることとなるのです。

キャストと歴史的背景

本作には、キャンディス・バーゲン、ピーター・ストラウス、ドナルド・プレザンスなど、実力派俳優たちが多数出演しています。彼らの演技は、この悲劇的な物語にさらに深みを与えています。

『ソルジャー・ブルー』は、単なる西部劇の枠を超えた、アメリカの歴史と戦争、そして人々の葛藤を描いた問題作です。サンドクリークの虐殺という歴史的事実を基に、戦争の非人間性と、偏見による悲劇を訴えかける、現代社会においても重要なメッセージを持つ作品と言えるでしょう。映画は、一見単純な逃避行劇として始まり、次第に歴史的悲劇へと発展していく構成になっています。観客は、登場人物たちの行動を通して、戦争と平和、そして人種間の対立について深く考えさせられることでしょう。

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