シャイアン族

シャイアン族：平原の狩猟民の歴史と文化

シャイアン族（Cheyenne）は、アメリカ合衆国に住む先住民族の一つであり、その歴史は波乱に満ちています。彼らは、主にワイオミング州周辺を拠点とする「北シャイアン族」と、オクラホマ州周辺を拠点とする「南シャイアン族」の二つの主要な支族に分かれています。この二つの支族は現在も同盟関係を維持しており、その歴史的背景は複雑です。

起源と名称

シャイアンという名前は、ダコタ・スー族が彼らを「わからぬ言葉を使う人々」と呼んだことが訛って生まれたとされています。一方、シャイアン族自身は、自らを「我ら同胞」を意味する「Tsetsêhestâhese」または「Dzitsi'stäs」と呼んでいます。

歴史

19世紀、シャイアン族は広大な平原地帯を遊牧しながら狩猟生活を送っていました。特にバッファローは彼らの生活に欠かせない存在であり、食料や生活用品の供給源として重要でした。

スー族との関係

シャイアン族は当初、スー族と敵対関係にありましたが、後に北方シャイアンはダコタ・スー族と同盟を結びました。この同盟は、1876年のリトルビッグホーンの戦いで、シャイアン、スー、アラパホーの連合軍がカスター中佐率いるアメリカ第七騎兵隊を壊滅させるという歴史的な勝利に繋がりました。この戦いは、アメリカ先住民の抵抗運動の象徴的な出来事として知られています。

強制移住と苦難

しかし、この勝利もつかの間、1868年のララミー条約によって、シャイアン族はオクラホマの保留地に強制的に移住させられました。狩猟を禁じられ、食料配給も滞るなど、過酷な状況に置かれました。1878年には、北シャイアン族のヴォーヘヘベ酋長（ダル・ナイフ）とオコホモザーケタ酋長（リトル・ウルフ）が、ワイオミングの故郷を目指して絶望的な逃亡を試みました。この出来事は映画『シャイアン』の題材となり、多くの人々に知られることとなりました。最終的に、彼らの努力が実を結び、北方シャイアンはモンタナに、南方シャイアンはオクラホマに保留地を得ることができました。

文化

シャイアン族は、ティピーと呼ばれる移動式の住居で生活し、バッファローなどの野生動物を追う移動型の狩猟生活を送っていました。バッファローが手に入らない時には、ウサギなどを狩り、湖や川ではマスやカメを捕獲していました。バッファローの肉はペミカンという保存食に加工され、湖でとれるワイルドライスは料理に使われ、現在でもその食文化が受け継がれています。

言語とコミュニケーション

シャイアン語はアルゴンキン語族に属しており、平原のインディアン部族はそれぞれ独自の言語を持つため、部族間のコミュニケーションは容易ではありませんでした。そのため、平原の部族は「平原インディアン手話」を発達させ、言葉を使わずに意思疎通を図っていました。

著名な人物

シャイアン族は多くの著名な人物を輩出しています。

ウッドン・レッグ（Wooden Leg）: 北方シャイアンの戦士で、リトル・ビッグホーンの戦いの英雄です。
ツー・ムーンズ（Two Moons）: 北方シャイアンの著名な酋長で、複数の別名を持っています。
ブラック・ケトル（Black Kettle）: 南方シャイアンの酋長です。
ローマン・ノーズ（Roman Nose）: 北方シャイアンの伝説的な英雄で、勇猛な戦士として知られています。
ダル・ナイフ（Dull Knife）: 北方シャイアンの酋長で、強制移住からの脱出を率いました。
リトル・ウルフ（Little Wolf）: 北方シャイアンの酋長で、ダル・ナイフと共に脱出を指揮しました。
タシナ・ワンブリ（Tashina Wanbli）: 日本人翻訳家と結婚した女性です。
ベン・ナイトホース・キャンベル（Ben Nighthorse Campbell）: インディアンとして初めて上院議員になりました。
アウル・ウーマン（Owl Woman）: シャイアンの女性で、アメリカ人貿易商と結婚しました。
トール・ブル（Tall Bull）: シャイアンの戦士で、勇敢な戦いで知られています。
ウルフローブ（Wolf Robe）: 南方シャイアンの酋長で、和平交渉に尽力しました。
ジョージ・ベント（George Bent）: シャイアンの歴史研究家であり、通訳としても活躍しました。
ジミー・カール・ブラック（Jimmy Carl Black）: ロックバンド「マザーズ・オブ・インベンション」のドラマーでした。
クリス・アイア（Chris Eyre）: 映画監督として知られ、先住民をテーマにした作品を制作しています。
ジョセフ・ファイア・クロウ（Joseph Fire Crow）: シャイアンの横笛奏者で、グラミー賞にノミネートされた経験があります。
ゴードン・イエローマン（Gordon Yellowman, Sr.）: 南方シャイアンの酋長です。
スーザン・ショーン・アルホ（Suzan Shown Harjo）: 先住民の権利擁護活動家で、博物館の創設にも関わりました。
ユージン・リトル・コヨーテ（Eugene Little Coyote）: 北方シャイアンの居留地の代表を務めました。
聖デイヴィッド・ペンドルトン・オーカーヘイター（St. David Pendleton Oakerhater）: 南方シャイアンの聖人として知られています。
ハーヴェイ・プラット（Harvey Pratt）: 画家、彫刻家、法医学画家として知られています。
W・リチャード・ウエスト・ジュニア（W. Richard West, Jr.）: スミソニアン協会の博物館館長を務めました。
W・リチャード・ウエスト (初代)（W. Richard West, Sr.）: 画家であり、教育者としても活躍しました。

まとめ

シャイアン族は、豊かな文化と歴史を持つ先住民族です。彼らは、広大な平原で狩猟生活を送り、勇敢な戦士として知られていましたが、強制移住や条約によって翻弄されてきました。現在でも、彼らの文化は受け継がれており、次世代へと語り継がれています。

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