サンドクリークの虐殺

サンドクリークの虐殺

1864年11月29日、アメリカのコロラド準州で、アメリカ陸軍が和平を求めていたシャイアン族とアラパホー族のインディアンの村を襲撃した、悲劇的な虐殺事件です。この事件は、アメリカ西部の入植拡大と、先住民の絶滅政策が背景にありました。

背景

19世紀半ば、アメリカは西部に勢力を拡大し、先住民の土地を侵略していました。南北戦争の混乱期に、コロラド州では金鉱発見をきっかけに入植者が急増し、先住民との対立が激化しました。入植者たちは「インディアンの絶滅」を叫び、新聞もこれを煽りました。

コロラド州では、インディアンの頭皮買い取り制度が設けられるなど、先住民への敵意が公然と表明されていました。このような状況下で、先住民と白人入植者の間では、残虐な殺し合いが頻発していました。

インディアン絶滅キャンペーン

1863年、デンバーの地元新聞『ロッキー山脈ニュース』は、インディアン絶滅キャンペーンを開始しました。この新聞は、インディアンを「脅威」として描き立て、白人の不安を煽りました。また、州議会でもインディアンの根絶を主張する議員が多数を占め、政治家たちは「インディアン絶滅」を政策として掲げることで支持を得ようとしました。

新聞は、インディアンとの小さな諍いでも「大虐殺」として誇張し、白人社会の恐怖心を煽りました。このような状況下で、コロラドの軍隊はインディアンを殺害し、デンバー市民はそれを称賛するような、異常な状況にありました。

和平会談

このような状況下で、1864年9月28日、コロラド準州デンバーの米軍基地で、シャイアン族、カイオワ族、アラパホー族の酋長と、コロラド準州知事ジョン・エバンズ、ジョン・チヴィントン大佐らの白人高官との和平会談が開かれました。シャイアン族からは、モケタヴァト（ブラック・ケトル）をはじめとする5人の酋長が出席しました。

会談で、ブラック・ケトルは白人との和平を強く訴えました。彼は、「部族の若者たちを抑えられなかったことを申し訳なく思う」と述べ、和平のために尽力することを誓いました。会談後、ブラック・ケトルたちは部族を移動させ、サンドクリークに野営を築きました。しかし、一部の部族民は和平に反対し、対立する状況が続いていました。

ブラックケトル酋長

ブラックケトルは、シャイアン族の温厚な酋長で、白人との和平を強く望んでいた人物です。アメリカインディアンの社会では、酋長は「調停者」であり、部族を強制する権限はありません。しかし、白人は酋長を「指導者」と誤解し、彼との合意で部族全体を従わせようとしました。この誤解が、後の悲劇を招く一因となりました。

ジョン・M・チヴィントン大佐

ジョン・チヴィントンは、牧師から軍人になった人物で、インディアン絶滅を強く主張していました。彼は、インディアンを「シラミ」に例え、大衆の前で「シラミを駆除するようにインディアンを殺せ」と演説していました。チヴィントンは、ブラックケトルを「大指導者」と勘違いしており、「インディアンを殺すなら、まず大指導者から」と考えていました。

米軍による大虐殺

1864年11月29日の早朝、チヴィントン大佐率いる約800人の騎兵隊が、サンドクリークのブラックケトルの野営地を襲撃しました。この時、野営地にいたのは女性や子供がほとんどで、男性は狩りに出かけていました。野営地のインディアンたちは、和平派であり、すでに武装を解除していました。

しかし、チヴィントンは容赦なく、野営地への一斉射撃を命じました。ブラックケトルは、星条旗と白旗を掲げて抵抗しましたが、米軍はこれを無視し、大砲で攻撃を開始しました。白人兵士たちは、男も女も子供も無差別に銃撃し、虐殺を行いました。逃げ惑う人々を追いかけ、殺戮を続けました。後に、虐殺時の生存者によって、当時の悲惨な状況が語られています。

チヴィントン隊の栄光

虐殺後、デンバーの新聞は、チヴィントンを英雄として称えました。新聞は、チヴィントンの報告を基に、インディアンを「敵対的」と非難し、チヴィントンの行為を正当化しました。デンバーの市民は、チヴィントンの帰還を熱狂的に迎え、彼を英雄として崇めました。

虐殺のあと

サンドクリークの虐殺は、和平を望んでいたインディアンを虐殺したことで、国内外で大きな非難を浴びました。連邦議会は調査団を派遣し、虐殺の真相を究明しました。虐殺の事実が明らかになるにつれて、チヴィントンへの非難が高まり、彼は失脚しました。

しかし、虐殺はシャイアン族の怒りを買い、白人への報復戦争が激化しました。また、ブラックケトルは、その後も和平を求めましたが、その願いは叶わず、1868年のウォシタ川の虐殺で殺害されました。この虐殺事件は、アメリカの歴史における、暗い影の一つとして、記憶され続けています。

まとめ

サンドクリークの虐殺は、アメリカの西進政策と先住民の絶滅政策がもたらした悲劇です。この事件は、アメリカの歴史における恥辱であり、今なお、その教訓を学ぶ必要があります。私たちは、歴史を忘れず、二度とこのような過ちを繰り返さないように、心に刻み続ける必要があるでしょう。

参考文献

Capps,Benjamin.『THE INDIANS』（1976年）
David Stannard.『American Holocaust: The Conquest of the New World』（1992年）

関連作品

『ソルジャー・ブルー (映画)』（1970年）
『Into the West』（2005年）

関連項目

インディアン戦争
白人至上主義
植民地主義
大量虐殺
領土問題
民族浄化
グラッタンの虐殺
ウーンデッド・ニーの虐殺

外部リンク

* サンドクリーク虐殺史跡（英語）

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