ソレダルの戦い

ソレダルの戦い

ソレダルの戦いは、2022年に始まったロシアのウクライナ侵攻における東部攻勢の一環として、ドネツィク州バフムート地区のソレダルを巡って繰り広げられた激しい軍事衝突です。ウクライナ軍と、ロシア連邦軍、そして民間軍事会社ワグネル・グループなどが対峙しました。

背景

2014年以来、ドネツィク州とルハーンシク州からなるドンバス地域の一部は、親ロシア派の支配下にありました。ロシアは2022年2月24日にウクライナへの全面侵攻を開始し、ドンバス地域の完全制圧を目指して東部でも攻勢を強めました。ルハーンシク州は、セベロドネツクとリシチャンシクからのウクライナ軍撤退後、2022年7月上旬にロシアの支配下となりました。その後、戦場はドネツィク州の重要都市であるバフムート、シヴェルシク、そしてソレダルへと移りました。

ソレダルへの最初の砲撃は5月17日に始まり、ロシア軍はドローンと航空機を使い、ソレダル、クリノヴェ、ヴォウチョヤリウカを攻撃しました。ドネツィク州知事パブロ・キリレンコは、ソレダル、バフムート、コンスタンチノフカが空爆されていると発表し、ロシア国防省はソレダルのウクライナ軍弾薬庫を攻撃したと主張しました。5月20日にはロシアのミサイルがアルテムシル製塩所を攻撃し、被害をもたらしました。5月末までに、ロシア軍はソレダルに向けてわずか4kmしか前進できませんでした。

6月1日にはロシアの砲撃で1人が死亡、2人が負傷し、6月6日にも砲撃が続きました。6月16日、ロシア軍はソレダルへの前進を試みましたが失敗しました。セベロドネツクとリシチャンシク陥落後の7月上旬には戦闘が激化し、ロシア軍は7月3日にソレダル、バフムート、および近隣の町を砲撃し、数km前進しました。7月には砲撃と小規模な攻撃が続き、7月9日夜から10日にかけては12発のミサイルがソレダルの文化センターを直撃し、対応する消防士がおらず、数日間燃え続けました。7月26日にはブフレヒルスク発電所が占領され、ソレダルが次の重要目標となりました。

侵攻前には1万5000人いたソレダルの住民は、7月下旬までに約2000人に減少しました。度重なる砲撃により、ソレダルの岩塩抗は閉鎖されました。8月2日には、ウクライナの著名な民族主義者であり軍将校のアンドリー・ジョヴァニクが戦死しました。

戦闘経過

初期段階（2022年8月3日～10月1日）

8月3日、ウクライナ軍はロシア軍がソレダルへの攻撃を開始したと発表しました。ロシア軍はソレダル、バフムート、およびその周辺地域への砲撃を開始しました。親ロシア派メディアは東と南東の境界線を突破したと主張しましたが、ウクライナ当局は否定しました。その後、ロシア軍と分離主義勢力は市内中心部の南東にあるクナウフ石膏工場を支配しました。8月10日には、ロシア軍がソレダルのビロカミャンスキー耐火材工場にも進出し、8月11日にはソレダル本土に入ったと主張しましたが、ウクライナ側は認めていません。ソレダルでの戦闘は激化し、両軍の砲撃戦となり、民間人は地下シェルターに避難しました。

8月16日、ソレダル周辺での空爆と地上戦が続き、LPR分離主義者は工業地帯の大半を支配したと主張しましたが、石膏工場を越えて進軍した証拠はありませんでした。8月19日には、ウクライナ軍とLPR部隊との間で砲撃と衝突が続き、ウクライナ軍参謀本部は、ロシア軍がストリャピフカとウォロディミリフカ方向から攻撃していると報告しました。8月27日には、ソレダル付近でロシア軍の攻撃を撃退したと報告されました。石膏工場付近での衝突は8月31日まで続きました。

9月8日、ウクライナはソレダルでロシアの攻撃を撃退したと発表し、ロシアの情報筋はロシアとドネツク人民共和国の部隊がソレダルの住宅街に進出し、ウクライナ軍と衝突したと主張しました。9月10日、ロシアの情報筋は石膏工場周辺の数ブロックを占領したと主張しました。

戦線の停滞（2022年10月2日～12月27日）

10月に入っても、ソレダルとその周辺ではロシア軍の攻撃が繰り返されました。ウクライナ軍参謀本部は、10月を通してソレダルへの多数の攻撃を撃退したと報告しました。10月19～20日、ロシアの情報筋はソレダルの工業地帯で衝突が続き、ロシア軍がわずかな利益を上げたと報告しました。10月22～24日には、ソレダルの南東郊外で家から家の衝突が続いている中、ソレダルの不特定の重要な通りを占拠したと報告されましたが、この主張は検証されませんでした。

11月上旬にはソレダル―バフムート地域での衝突が激化し、ワグネル・グループがバフムートの封じ込めを試み、ウクライナ軍の防衛線を突破しようとしました。ウクライナ国防次官ハンナ・マリャルは、ソレダル・バフムート・ドネツク市での戦闘が激化し、1日に数十回のロシア軍の攻撃を撃退していると述べました。しかし、11月8日までにロシア軍は目立った進展を見せられませんでした。ソレダル・バフムート戦線での衝突は12月まで続き、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12月3日の戦闘を「最も熱く、最も痛ましいもの」と表現しました。12月14～16日には、ワグネル戦闘員がヤコウリフカでの掃討作戦を完了し、ソレダルの北東側面沿いでの攻撃を可能にしたと主張しました。

12月下旬までに、戦闘の多くはバフムートを中心に行われ、ソレダルはバフムートの北東側面と補給線を守る衛星拠点と見なされていました。ソレダルの多くは、ロシアの継続的な砲撃、空爆、そしてウクライナの抵抗に対する小規模な地上攻撃の中で廃墟と化していました。ロシア軍は12月27日にバクムツク村を占領しました。12月29日、ウクライナ大統領顧問のオレクシイ・アレストビッチは、ソレダル・バフムート戦線沿いで「大規模な部隊の損失」を被っていると述べましたが、ロシアはさらに多くの犠牲者を出していると主張しました。

ロシアの突破と勝利（2022年12月28日～2023年1月16日）

12月27日にロシア軍がバクムツクを占領した後、ロシアの情報筋は2023年1月4日にソレダルの南郊外にあるデコンスカヤ鉄道駅を制圧したと主張しました。2023年1月5日、ロシア国防省はウクライナ軍をソレダル岩塩坑に押し戻したと主張しましたが、この主張は検証されていません。ウクライナ軍参謀本部は1月7日だけでソレダルに76回の砲撃があったと主張し、第46独立空中機動旅団がソレダルの大半を防衛していました。1月9日、ウクライナ国家国境庁のユーリー・ユルチク大佐がソレダル防衛中に砲撃を受けて戦死しました。

1月10日、ワグネル・グループの指導者エフゲニー・プリゴジンは、ロシア軍がソレダルを完全に制圧したと主張しましたが、この主張は検証されませんでした。同日、アメリカのシンクタンク戦争研究所（ISW）は、ロシアはソレダル全域を制圧しておらず、主張は虚偽だと報告しました。1月11日、プリゴジンはソレダル塩鉱での写真を公開し、ロシア軍がこの集落を支配下に置いていると宣言しましたが、ウクライナ国防省はこれに異議を唱えました。しかし、戦争研究所は1月11日にロシアがソレダルを占領した可能性が高いと報告しました。1月12日、プリゴジンは再びロシアがソレダル全域を支配したと宣言し、ロシア国防省と協調しました。その後、ロシア外務省はワグネルが戦闘に参加したことを認めました。1月13日にはロシア国防省もソレダル制圧を発表しました。

ウクライナは、ロシアのソレダル支配を否定し続け、集落の西側部分を完全に支配しているだけでなく、中心部に孤立地帯がまだ存在すると述べました。ウクライナ国防次官ハンナ・マリャルは、戦闘が続いていると述べ、ウクライナ軍が防衛を維持しようとしているとしました。ウクライナ大統領ウォロディミル・ゼレンスキーは、ソレダルを防衛する部隊に感謝しました。

1月14日、戦争研究所はウクライナ軍が町の最西端の鉱山を含むソレダルの行政区域の領土を支配したが、入植地自体には陣地がないと述べました。1月16日には、キーウ・インデペンデントがロシア軍がソレダルの行政区域を支配していると報じ、ウクライナ軍が無人偵察機部隊の司令官によって、第7鉱山近くの最後の工業地帯をロシアが占領したと述べました。MSNもロシアがソレダルの支配を確保したと報じ、ウクライナ軍報道官は1月25日にソレダルからの撤退を認めました。

死傷者

1月9日、人道支援機関で働く2人の英国人アンドリュー・バグショーとクリストファー・パリーがソレダルへ出発した後、行方不明となりました。1月11日、ワグネル・グループは1人の遺体が見つかったと発表し、パスポートを公開しましたが、遺体がクリストファー・パリーであるかは検証されていません。

軍の死傷者

ウクライナ軍のある兵士は、死者が多く、ソレダルでは誰も死者を数えていないと語りました。1月11日には、ウクライナ大統領顧問が、バフムートとソレダルでの戦闘は侵攻開始以来最も血なまぐさいものだと述べました。1月12日、ワグネル・グループの創設者は、ソレダルで約500人のウクライナ兵を殺害したと述べました。1月13日には、ロシア軍が過去3日間でソレダルで700人のウクライナ兵を殺害し、5ヶ月間の戦闘で2万5000人以上の死傷者が出たと主張しました。一方、ウクライナはソレダル地域で100人以上のロシア兵を殺害したと主張し、ロシア軍が同胞の死体の上を前進していると主張しました。

民間人の犠牲者

ドネツィク州知事によると、15人の子どもを含む559人の民間人が市内に残っており、避難できませんでした。

分析

戦争研究所は、ロシア軍がソレダル～バフムート北とザイツェベ～バフムート南の支配を確立し、幹線道路のウクライナの支配を混乱させることを目指していると分析しました。アナリストは、バクムツク占領後、ロシアがソレダルを攻撃するための部隊を移動させると考えました。イギリス国防省は、ソレダルのほぼ全域をロシアが支配している可能性が高く、最優先事項は岩塩坑に通じるトンネルの支配であると述べました。ウクライナ国防相は、戦闘が非常に困難で、ワグネルの傭兵の攻撃的な戦術が多くの犠牲者を出したと主張し、ワグネルがこの地域の鉱物資源を支配するために戦っていると述べました。

西側のアナリストはソレダルの戦略的価値を否定し、ロシアの勝利をピュロスの勝利と評価しました。アメリカ国家安全保障会議の報道官は、バフムートとソレダルの両方がロシア側に落ちても、戦争に戦略的な影響はないと述べました。

しかし、塩の国内生産の90％以上を担っていたソレダルの陥落により、2023年のロシアは塩の生産量が前年比10.5％増と国内市場をまかなえる量となり、中国など友好国への輸出が増加しました。一方、ウクライナは塩の輸出国から輸入国へと転落しました。

関連項目

* バフムートの戦い

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