ソー (ロケット)

ソー (Thor) ロケット

ソー（Thor）は、アメリカ合衆国が開発・運用した初期の打ち上げロケットシリーズです。その名称は、もともと短距離弾道ミサイルとして開発された「PGM-17」の通称に由来します。

開発経緯と特徴

PGM-17ミサイルは単段式の液体燃料ロケットでしたが、これに新たな上段を追加・組み合わせることで、ペイロードを地球周回軌道に乗せる打ち上げロケットとしての能力が付与されました。これにより、ソーロケットはアメリカの宇宙開発の黎明期において、重要な役割を担うことになります。

ソーロケットは、単一の構成にとどまらず、様々な上段や固体ロケットブースターを組み合わせることで、多岐にわたるミッション要求に対応しました。この柔軟性が、その後のデルタロケットシリーズへと発展する上で重要な要素となりました。

主な用途

ソーロケットは、科学衛星や通信衛星といった一般的に知られる宇宙機の打ち上げに用いられたほか、冷戦時代の機密プロジェクトであったコロナ計画における偵察衛星の軌道投入にも頻繁に使用されました。これにより、アメリカの宇宙における情報収集能力の向上に大きく貢献しました。

主要な派生型

ソーロケットは、組み合わせる上段の種類によっていくつかの主要な派生型が存在します。以下にその代表的なものを挙げます。

ソー・エイブル (Thor-Able)
ヴァンガードロケットの第2段から派生した液体燃料ロケット「エイブル（AJ10-101）」を上段として使用した構成です。推進剤には硝酸とUDMHが用いられました。さらに、固体ロケットエンジンによる3段や4段も加えられることがありました。初期の月探査計画にも投入されましたが、月への到達は実現に至らず、後に運用を終了しました。

ソー・デルタ (Thor-Delta)
エイブルロケットから派生した「デルタ」を上段に用いたモデルです。このソー・デルタこそが、現在も改良・使用されているデルタロケットシリーズの最初のロケットとなります。まさに、ソーからデルタへの橋渡し役を果たした重要な派生型です。

ソー・アジェナ (Thor-Agena) A/B/D
2段式ロケットとして構成され、第2段には「アジェナ A/B/D」上段ロケット（Bell 8048 / 8081 / 8081など）が使用されました。推進剤には硝酸とUDMHが用いられています。偵察衛星の打ち上げなどで活躍しました。

ソー・エイブルスター (Thor-Able-Star)
こちらも2段式ロケットで、「エイブルスター（AJ10-104）」を第2段として搭載した構成です。エイブルスターはエイブルの改良型にあたります。

* ソー・バーナー (Thor-Burner)
2段式の構成で、第2段に「バーナー2」と呼ばれる固体燃料ロケットを用いたモデルです。シンプルな構成で、比較的軽量なペイロードの打ち上げに用いられました。

後世への影響

ソーロケットシリーズは、ミサイル技術を宇宙開発に応用するという初期の取り組みの成功例であり、アメリカの宇宙打ち上げ能力の確立に大きく貢献しました。特にソー・デルタは、その後の高性能なデルタロケットファミリーへと発展し、現代に至るまで多くの衛星打ち上げミッションを支える基礎となりました。多様な構成を持つソーロケットは、宇宙輸送システムの発展において重要な一歩を記した存在と言えるでしょう。

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