ソール頌歌

ソール頌歌（Þórsdrápa）

『ソール頌歌』は、10世紀後半に活躍した詩人エイリーヴル・ゴズルーナルソンが、ヤール（首長）のハーコン・シグルザルソンに献上したスカルド詩です。別名『ソール神頌歌』、『トール讃歌』とも呼ばれ、895年頃の作品と推測されています。

内容

この詩は、トール神がいかにして武器ミョルニルを手に入れ、巨人たちを打ち破ったのかを語ります。物語は、ロキの策略によってトールが巨人ゲイルロズルとの戦いに挑む場面から始まります。ロキはトールを欺き、巨人ゲイルロズルと対決させようとします。

トールは、女巨人グリーズルから魔法の品々の助けを得て、従者のシャールヴィと共にゲイルロズルを打ち破り、他の巨人たちも倒します。トールはシャールヴィを伴い、ヨトゥンヘイムの海を渡ります。この場面は多くの暗喩表現が用いられ、困難な航海を成し遂げたトールとシャールヴィの勇敢さを称えています。

海を渡った後、彼らはゲイルロズルの洞窟から現れた巨人たちに囲まれますが、素早く応戦します。ゲイルロズルの館では、トールが座った椅子が持ち上げられ、天井に押しつぶされそうになりますが、グリーズルから貰った棍で天井を破壊し、足元にいたゲイルロズルの娘を踏み潰します。

ゲイルロズルはトールに、熱く溶けた鉄塊を投げつける遊戯を仕掛けますが、トールは鉄の手袋で受け止めます。ゲイルロズルは柱の陰に隠れますが、トールは鉄塊を投げ返し、柱ごとゲイルロズルを打ち貫きます。

類似の伝承

この詩に登場する神話は、スノッリ・ストゥルルソンの『エッダ』第二部『詩語法』や、サクソ・グラマティクスの『デンマーク人の事績』第8巻にも類似した話が見られます。ただし、『詩語法』のゲイルロズルの神話にはシャールヴィが登場しないなど、細部に相違点もあります。

その他の『ソール頌歌』

この詩の他に、以下の2つの詩（の断片）も『ソール頌歌』と呼ばれることがあります。

エイステイン・ワルダソンによる10世紀の詩：ヨルムンガンドを狩るためにトールが魚釣りに出る話（断片が3つ残存）。
ソルビョルン・ディーザルスカールドによる10～11世紀の詩：トールに殺された巨人の名前が列挙されている（1聯と2行が残存）。

これらの詩は、『詩語法』の中にのみ記録されています。

『ソール頌歌』は、ケニングの創造的な使用や、隠喩に富んだ複雑な表現が特徴です。また、北欧神話の物語を含んでいる数少ないスカルド詩の一つとして、貴重な資料となっています。

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