ソ連国防人民委員令第227号

国防人民委員令第227号

国防人民委員令第227号（ロシア語: Приказ № 227）は、1942年7月28日にソビエト連邦の国防人民委員部によって発令された命令です。これは第二次世界大戦中、特に独ソ戦において赤軍の士気を保ち、組織の規律を強化するために発布されました。この命令の中で最も有名なフレーズは「一歩も下がるな!」（ロシア語: Ни шагу назад!）であり、ソ連の抵抗精神の象徴となりました。

背景

1942年5月、ハリコフを巡る戦闘においてソ連軍はバルベンコボ攻勢を試みましたが、結果は失敗に終わりました。これにより赤軍南西方面軍の戦車戦力はほぼ壊滅し、続くブラウ作戦ではドイツ軍がウクライナでの攻勢を強化しました。この状況下で、赤軍は結果的に劣勢に立たされ、南西方面軍と南方面軍はドン河東岸への撤退とロストフの防衛を命じられましたが、ロストフはわずか5日後の7月23日に陥落します。この事態を受けて、227号令が発布され、南部戦線の現状が厳しく批判されました。

概要

命令では、全ての指揮官が無断で後退することを禁じ、後退した者は軍法会議にかけられることが明記されました。この厳罰規定に基づき、各方面軍は懲罰大隊の編成を指示されました。懲罰大隊は規律違反で起訴された兵士により構成され、最前線の危険地帯で実戦に参加することとなりました。同時に、兵卒と下士官で構成される懲罰中隊も編成されました。

227号令施行から1945年までの間に、427,910名の兵士がこの懲罰大隊に組み込まれました。この制度は、前年のモスクワ戦でのドイツ軍の後退時に規律維持の手段として用いられ、一定の効果が見られたことを根拠にしていました。

一方で、軍に督戦中隊を編成せよとの命令は、1942年11月29日に取り下げられました。この試みは、赤軍が苦境にある中で士気を高めようとするものでしたが、結果的には逆効果を生むことが多く、実際には督戦隊員が現場で混乱を引き起こす原因にもなりました。正式な督戦隊は1942年10月に姿を消しましたが、内務人民委員部やスメルシ（NKVD）はその後も督戦活動を続けました。

結論

国防人民委員令第227号は、戦争の厳しい現実の中で赤軍の士気と組織規律を確保しようとした防衛策でしたが、その手法の一部は効果を上げられず、さらなる混乱を招く結果となりました。最終的に、督戦隊は1944年11月29日に正式に解散され、戦争の中での赤軍の役割と意義の見直しが始まることになります。

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