ゾルターン・ロズニャイ

ゾルターン・ロズニャイ（Zoltán Rozsnyai, 1926年 1月29日 – 1990年 9月10日）は、ハンガリー出身の傑出した指揮者、音楽監督です。激動の時代を生き抜き、故国を離れた後も国際舞台で重要な足跡を残しました。

幼少期と教育

1926年、ハンガリーの首都ブダペストで生まれたロズニャイは、幼少期から並外れた音楽の才能を示しました。国内随一の音楽教育機関であるフランツ・リスト音楽院で、コダーイ・ゾルターン、バルトーク・ベーラ、エルンスト・フォン・ドホナーニといった、当時の音楽界を代表する巨匠たちの指導を受けました。わずか10歳でコンサートピアニストとしてデビューするほどの早熟ぶりで、音楽院では最年少の学生として将来を嘱望されました。

ハンガリーでのキャリア

音楽院卒業後、ロズニャイは指揮者として活動を開始します。24歳という若さでデブレツェン歌劇場の音楽監督に就任し、その後、ハンガリー国立フィルハーモニー演奏協会の指揮者として経験を積みました。1956年5月にはローマ国際指揮コンクールで入賞し、国際的な評価を得ます。この受賞を受けて、すぐにローマへ客演指揮者として招かれました。

亡命とフィルハーモニア・フンガリカ

1956年10月のハンガリー動乱は、彼のキャリアに大きな転換点をもたらしました。ソ連軍による動乱鎮圧後、彼は故郷への帰還を選ばずウィーンへ移住します。この時期、ハンガリーを離れざるを得なかった多くの優れた音楽家たちが集まり、フィルハーモニア・フンガリカが設立されました。ロズニャイはその創設に参加し、初代首席指揮者に就任します。彼はこの亡命オーケストラを献身的に育成し、ヨーロッパ有数のレベルに引き上げました。1959年には、ロックフェラー財団やフォード財団の支援を得て、フィルハーモニア・フンガリカ初のアメリカ演奏旅行を実現させ、楽団は各地で高い評価を得ました。この成功は、ロズニャイ自身にも数多くの客演機会をもたらしました。

アメリカでの活動

1961年、ロズニャイはアメリカ合衆国へ永住します。新天地でもその才能はすぐに認められ、1962年には伝説的な指揮者レナード・バーンスタインの下でニューヨーク・フィルハーモニー管弦楽団の准指揮者に就任。1963年にはクリーヴランド・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督、1964年にはユーティカ交響楽団の指揮者を務めました。1967年には、多くの候補者の中から選ばれ、サンディエゴ交響楽団の音楽監督に就任（1971年まで）。彼の在任中、同楽団は初の録音を行いました。その後も、1978年から1984年までノックスビル交響楽団の首席指揮者を務めるなど、アメリカ各地の主要オーケストラで活躍しました。

後期とサンディエゴ国際管弦楽団

晩年に差し掛かっても、ロズニャイは音楽活動に情熱を注ぎ続けました。1987年には、サンディエゴ国際管弦楽団を設立します。これは、国際的な経験を持つ若手音楽家で構成された青少年オーケストラでした。メキシコ国境に近い立地を活かし、国境を越えた交流演奏活動を展開し、注目を集めました。メキシコの合唱団との共演によるモーツァルト《レクィエム》やヴィヴァルディ《グローリア》の上演、ハイドン《四季》の録音など、教育と国際交流を兼ねたユニークなプロジェクトに取り組みました。

死去

ロズニャイは最期までサンディエゴ国際管弦楽団の活動に深く関わっていましたが、1990年 9月10日、ニューヨークにて心筋梗塞のため64歳でその生涯を閉じました。

ゾルターン・ロズニャイは、激動の時代に故国を離れながらも、フィルハーモニア・フンガリカを世界的なレベルに引き上げ、アメリカ各地のオーケストラで指導力を発揮し、さらに後進の育成と国際交流に尽力するなど、多大な功績を残した指揮者として記憶されています。

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