タイス (古代ギリシアの遊女)

タイスの生涯と影響

タイス（ギリシア語: Θαΐς）は、古代ギリシアの著名なヘタイラ（高級娼婦）で、アレクサンドロス3世の遠征に同行して知られています。彼女は魅力的で知恵に富む女性であり、特にペルセポリスの炎上に関与したことで記憶されています。伝説によると、彼女の進言がこの事件を引き起こしたとされています。

アレクサンドロス大王とタイスの関係

タイスは当時、アレクサンドロス大王に仕える将軍プトレマイオス1世の恋人でもありました。アレクサンドロスは彼女を非常に気に入っていたため、彼女との関係が恋愛関係にあった可能性もあると考えられていますが、具体的な詳細は不明です。彼女の機転や人を楽しませる才能は、多くの人々に称賛されていました。

ペルセポリスの炎上

紀元前330年、アレクサンドロスがアケメネス朝の首都ペルセポリスを襲撃した際、タイスは酒宴の席で「もしもアレクサンドロス様が私たちと一緒に行列を組んで宮殿に火を放ち、ペルシア人の栄華を一瞬で消し去ったら、その行為は王様が達成した偉業の中で最高のものとなるでしょう」と語りました。この発言がアレクサンドロスを刺激し、彼をペルセポリスの宮殿を燃やす決断に導いたとされています。

この行動は、歴史文献においてタイスの提案によるものであると多くの古代の著述家、例えばディオドロスやプルタルコスによって記録されています。彼らによると、これはペルシア戦争の際にクセルクセス1世がアテネの神殿を燃やしたことへの復讐であるとも報じられています。

タイスのその後

アレクサンドロスの死後、タイスの運命は不明瞭ですが、アテナイオスによると彼女はプトレマイオスと結婚した可能性があります。この関係は法的には結婚とはいえないかもしれませんが、それに近い状態だったと言われています。二人の間には、ラゴスとレオンティスコスという二人の息子とエイレネという娘が生まれました。レオンティスコスはキプロスにいた時に捕虜になり、その後プトレマイオスの元に戻されました。エイレネはキプロスの王と結婚したとも伝えられています。

タイスの死去については詳細が分かっていませんが、彼女の名前は古典文学やその後の作品においても様々に言及されています。

タイスへの影響

古典的な文学におけるタイスの描写は多岐にわたります。たとえば、プビリウス・テレンティウス・アフェルの『宦官』や、オウィディウスの詩の中で彼女が登場します。また、ダンテ・アリギエーリの『神曲』にも関連して登場しますが、その人物像がタイス自身であるかは議論の余地があります。

18世紀には画家ジョシュア・レノルズがタイスを描いた作品がロイヤル・アカデミーで展示されており、19世紀にはロシアの作家イワン・エフレーモフによって彼女の生涯を描いた小説『アテネのタイス』が発表されました。

このように、タイスの影響は芸術や文学の中で広く認識され続けています。彼女の物語は、古代ギリシアの文化やその後の歴史にも大きな影響を与えたと考えられています。

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