タイ洪水 (2011年)

2011年タイ洪水の概要

2011年にタイで発生した洪水は、モンスーン期にともなう激しい降雨により引き起こされました。この洪水は特にチャオプラヤー川流域で大きな被害をもたらし、メコン川周辺でも影響が見られました。洪水は7月に始まり、3ヵ月以上にわたって続きました。最終的な被害状況として、446人の死亡が確認され、影響を受けた人数は230万人に及ぶとされています。経済的な損失も著しく、総額は1567億バーツ（約4000億円）と推定されています。また、600万ヘクタール以上の土地が水に浸かり、そのうち30万ヘクタールは農業用地でした。58の県が被害を受けたこの洪水は、歴史上最も深刻なものであるとされています。

背景

タイは熱帯性の湿潤気候に属し、特に北部では季節性の豪雨による鉄砲水が多く発生します。洪水は北部地区からチャオプラヤー川を介して中部平野へ広がり、東北部でも河川の増水などの影響を及ぼしました。また、ベトナムや半島南部から襲来する熱帯低気圧が降水量を増す要因となり、洪水のリスクを高めます。

政府は、農村地域への洪水対策に取り組んできましたが、限界がありました。特にバンコクはチャオプラヤー川の河口に位置し、洪水のリスクが常に存在しています。排水トンネルの整備などを進めてきたものの、2001年までは大きな洪水が発生していました。過去の経験から、洪水対策には一定の成功を収めていると考えられていましたが、しばしば問題は続いていました。

洪水の発生

2011年の洪水は、モンスーン期を越えた後、台風ノックテンが北ベトナムに上陸した影響を受けて起こりました。この台風は、タイ北部や東北部に多量の降雨をもたらし、7月下旬から深刻な降水が始まりました。これにより、鉄砲水や浸水被害が広がり、各地で被害が確認されました。河川が氾濫し、農業やインフラも深刻な影響を受けました。

9月19日になると、中部低地のほとんどの県が洪水の影響を受けるようになり、バンコクの周辺地域でも冠水が広がり始めました。水門の破損などにより、広範囲で農地が水没しましたが、それがバンコクへの洪水の影響を軽減した側面もあります。

その後、インドシナ半島にはさらに3つの台風が上陸し、既に高水位のダムは下流への洪水を悪化させる事態に直面しました。アユタヤでは、洪水が歴史公園や病院に影響を与え、避難を余儀なくされることもありました。

バンコクの影響

10月中旬から下旬にかけて、バンコクの中心部でも冠水が始まり、政府の対策が試みられました。バンコク周辺では、堰堤や運河を用いて水の排出が行われました。政府は、バンコクの洪水が収束に向かっていると宣言し、12月にはほぼ全域で水が引いたと報告されました。今回は水の流れが鈍く、洪水が長引く原因となっていたと言われています。

救援活動

政府の救援活動は8月中旬から始まり、インラック首相が被害の多い県を視察しました。洪水モニタリングセンターも設立され、地方の支援が行われました。また、世界各国からの支援も受け、復旧活動が進められました。

被害状況

この洪水は、被災家族数が約824848世帯、影響を受けた人数は2484393人と推測されていますが、経済的損失も甚大で、タイの成長率を大きく押し下げる結果となりました。製造業や観光業にも深刻な影響が及び、特に日系企業が多く所在するアユタヤ県で、工場やサプライチェーンが大きく損なわれました。また、観光客のキャンセルも相次ぎ、観光業も影響を受けました。

これらの出来事によって、タイは未来の洪水対策をより一層強化する必要性を痛感しました。

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