タガネソウ

タガネソウ

タガネソウは、カヤツリグサ科スゲ属に分類される多年草です。スゲの仲間としては珍しく、細長い葉ではなく、楕円形に近い丸みを帯びた葉を持つことが特徴です。

特徴

• - 生育環境: やや乾燥した山地の木陰や道端に自生します。北海道から九州、そして北東アジアに分布しています。
• - 形態:

- 地下茎を伸ばして繁殖し、まばらな群落を形成します。
- 根元から数枚の葉をつけます。葉は緑色または黄緑色で、薄く、つやがなく、縦方向にしわがあります。
- 葉の付け根は紅色を帯びています。
- 夏緑性で、冬には地上部が枯れますが、翌年には再び芽を出します。
- 花茎は高さ30cmほどに成長し、緑色でつやがなく、無毛です。断面は三角形をしています。
- 小穂は花茎の上部に数個、間隔を空けて付きます。小穂の付け根にある苞は鞘状で、小さな葉身を持ちます。
- 小穂は下の方のものほど柄がありますが、花茎に沿って直立します。
- 小穂は雄雌性で、先端部に少数の雄花をつけます。果胞は先端が丸く、肉厚です。
- 果実が熟すと花茎が倒れ、葉の間に隠れるように地表に伏せます。

• - 名前の由来: スゲの仲間としては特に幅広い葉の形が、工具の鏨（たがね）に似ていることに由来します。

近縁種

タガネソウに似た姿のスゲは少ないですが、以下の近縁種が知られています。

• - ケタガネソウ (C. ciliatomarginata): タガネソウによく似ていますが、全体的に小型で、葉の縁に長い毛が多い点が異なります。また、花茎先端の小穂が雄小穂であることも特徴です。タガネソウよりもやや南に分布します。
• - ササノハスゲ (C. pachygyna): 葉の形はタガネソウに似ていますが、小穂の形状が大きく異なります。小穂は球形で、花茎の各節から2-3個ずつ出ます。また、常緑性である点もタガネソウとの違いです。近畿地方以西の本州と四国に分布します。

利用

タガネソウに実用的な利用価値は特にありませんが、その独特な姿が好まれ、山野草として鉢植えや庭植えにされることがあります。特に、葉に斑入りのある個体は観賞価値が高いとされます。園芸の分野では、タガネソウとケタガネソウが区別されずに扱われることもあります。

分類

タガネソウ、ケタガネソウ、ササノハスゲ、イワヤスゲ（四国固有種）は、形態的な特徴からタガネソウ節 (Sect. Siderostictae) としてまとめられることがあります。タマツリスゲ節に含める場合もあります。

スゲ属 (Carex)

• - タガネソウ節 (Sect. Siderostictae)

- タガネソウ (C. siderosticta Hance)
- ケタガネソウ (C. ciliatomarginata Nakai.)
- ササノハスゲ (C. pachygyna French. et Sav.)
- イワヤスゲ (C. tumidula Ohwi.)

参考文献

• - 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』(1982) 平凡社
• - 北村四郎・村田源・小山鐵夫『原色日本植物図鑑 草本編(III)・単子葉類（改定49刷）』(1987) 保育社
• - 勝山輝男『日本のスゲ』、2005年、文一総合出版

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