タッター

タッター

タッター（ウルドゥー語: ٹھٹہ, シンド語:ٺٽو ）は、パキスタン南東部、シンド州に位置する歴史的な都市です。現在の人口はおよそ2万2千人ですが、この地は非常に長い歴史を持ち、多くの時代で重要な役割を果たしてきました。

古代から中世にかけての歴史

この地域の歴史は古く、紀元前326年にはマケドニア王アレキサンダー大王の遠征隊がインド・パキスタン遠征の途上でタッター近郊を通過したと伝えられています。中世に入ると、14世紀以降、タッターはシンド地方低地の政治的、経済的、文化的な中心地として繁栄を築きました。特にサムマー朝（Jamot）やアルグン朝（Arghun Dynasty）の時代には、この地域の首府として栄えました。

ムガル帝国と衰退

16世紀末の1592年には、勢力を拡大していたムガル帝国の支配下に入り、その統治下でも引き続き重要な拠点であり続けました。しかし、18世紀の1739年、イランからのナーディル・シャーのインド侵攻によってタッターは陥落し、その後一時的に都市機能が放棄されるという大きな転換期を迎えることとなります。

世界遺産「タッターの歴史的建造物群」

タッターが持つ豊かな歴史遺産は、国際的にも高く評価されています。1981年には、都市とその周辺に点在する歴史的な建造物群が「タッターの歴史的建造物群」としてユネスコ世界遺産に登録されました。この登録は、この地が持つ文化的・歴史的価値が、現存する、あるいは失われた文明や伝統の「稀な、あるいは唯一の証拠」であるという基準（世界遺産登録基準(3)）を満たすものとして認められたためです。

主な建築物と見どころ

タッターには、様々な時代の支配者が残した多くの歴史的建築物が現存しています。

ジャーマー・モスク: ムガル皇帝シャー・ジャハーンの命により、1647年から1649年にかけて建設された壮麗なモスクです。このモスクは、その美しい幾何学模様や花柄の釉薬がかけられたタイル装飾で知られており、当時の建築技術と芸術性の高さを今に伝えています。
バードシャーヒー・モスク: 都市の中心部に位置するこのモスクも、シャー・ジャハーンによって建てられました。101ものドームを持つ独特の外観をしており、特筆すべきは、当時の高度な音響技術を駆使して設計された内部空間です。特別な拡声器を使わなくても、イマーム（指導者）の声がモスク内のどこにでも明瞭に響くよう工夫されています。
* マクリーの丘の墓地群: タッター近郊のマクリーの丘には、広大な共同墓地が広がっています。この墓地には、数千基に及ぶ墓石が整然と、あるいは無造作に並んでおり、その景観は圧巻です。ここには、15世紀にタッターを治めたサムマー朝のジャーム・ニザームッディーンをはじめ、ムガル帝国の役人や様々な時代の著名人たちの精巧な彫刻が施された墓が点在しており、タッターの歴史を知る上で非常に重要な場所となっています。

周辺の見どころ

タッター近郊には、自然の景観を楽しめる場所もあります。美しいキーンジャル湖は、パキスタン最大の淡水湖の一つであり、特に週末になると大都市カラチから多くの人々が訪れる人気のレクリエーションスポットとなっています。

タッターは、その歴史の深さ、そして残された豊かな建築遺産によって、過去の栄華を今に伝える貴重な都市です。世界遺産登録された建造物群や広大な墓地は、訪れる者に強い印象を与えます。

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