タヤサル

タヤサル（Tayasal）

タヤサルは、グアテマラのペテン県に位置するイツァ族の王国の首都でした。この地はペテン・イツァ湖のほとりにあり、1697年3月にスペインに征服されるまで独立した国家として存在しました。タヤサルはマヤ文明の最後の都市と考えられており、その征服によってマヤ文化は衰退と滅亡を迎えました。

位置

タヤサルの正確な位置については多くの異論が存在します。一説によれば、現在のペテン県のフローレス市があるフローレス島がその所在地とされ、また別の説ではタヤサル半島、あるいはヤシュハ湖のトポシュテ島とも言われています。1525年にこの地域を訪れたスペインの探検家ベルナル・ディアス・デル・カスティリョの記録において、タヤサルという名称が初めて確認されました。この名称は「イツァの土地」という意味で、イツァ族の支配地域全体を指すものでした。なお、王都は「ノフペテン」として知られ、フローレス島に位置していました。

考古学的にタヤサルはタヤサル半島に位置し、1920年代にカーネギー研究所によって調査が行われ、1970年代にはペンシルベニア大学が引き続き研究を行っています。2009年以降はタヤサル考古学プロジェクトによって現地調査が続けられています。

歴史

タヤサル半島の居住の歴史は古く、形成期中期から現在まで連続した居住が確認されています。古典期後期から終末期にかけて、タヤサルの人口は21,000人から34,000人に達し、この時が最盛期でした。9世紀以降、ペテン地域では多くの都市が放棄されましたが、ペテン・イツァ湖周辺には人々が住み続け、完全に無人化することはありませんでした。

16世紀の初め、スペインの侵略者たちはユカタン半島や南の高地マヤを支配しましたが、内陸のペテン地域は未だスペインの支配下にはありませんでした。この時期、マヤ族は独自の生活様式を維持していました。タヤサルの王はチチェン・イッツァ出身とされ、マヤパンの減衰後にこの地域に移住したとされる伝説があります。

1525年、エルナン・コルテスがホンジュラス遠征の途中でタヤサルに立ち寄りました。この際、彼はタヤサルの王であるカネクに歓迎されました。この出来事はタヤサルに関する西洋の文献に記録された最初の事例となります。その後、17世紀には宣教師たちによる布教の試みが行われましたが、成功には至りませんでした。

最終的に1695年、フランシスコ会のアンドレス・デ・アベンダーニョ・イ・ロヨラがタヤサルのカネク王に再度会い、布教を試みましたが、王はこれにも応じませんでした。翌年の1697年3月13日、ユカタン総督のマルティン・デ・ウルスアはタヤサルへの道を整備し、108人の兵士と共にタヤサルを軍事的に征服しました。この出来事はマヤ文明にとって歴史的な転機となりました。

参考文献

• - 八杉佳穂『マヤ興亡 : 文明の盛衰は何を語るか?』
• - Chase, Arlen F. “Tayasal (Petén, Guatemala)”
• - Coe, Michael D.『古代マヤ文明』
• - Jones, Grant D. “Itzá”
• - Shiratori, Yuko “Tayasal”

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