ダイハツ・タントエグゼ

ダイハツ・タントエグゼ：上質志向の軽スーパーハイトワゴン

ダイハツ工業は、2009年から2014年にかけて、軽自動車市場において独自の地位を築くべく、タントシリーズの派生車種としてタントエグゼを開発・販売しました。タントエグゼは、ベースモデルであるタントとは一線を画す、上質志向の軽スーパーハイトワゴンとして登場しました。

開発コンセプトと特徴

タントがシートアレンジと広々とした室内空間を優先した設計だったのに対し、タントエグゼは、快適な座り心地を重視したシートを採用することで差別化を図りました。これは、より大人向けの落ち着いた雰囲気と上質な乗り心地を求めるユーザー層への訴求を狙った戦略と言えます。

外観デザインにおいては、スポーティな印象を与えるバンパーやフロントグリル、ランプ類を採用した「タントエグゼカスタム」もラインナップされました。このカスタムモデルは、より若年層やスポーティなデザインを好むユーザー層を取り込むためのバリエーションとして用意されました。

販売目標は月間4,000台と発表されましたが、実際には目標を下回る販売台数に留まりました。その要因としては、タントよりもムーヴの派生車種に近い印象が強く、ユーザー層からの明確な理解を得られなかった点が挙げられます。

メカニズムと性能

タントエグゼは、タントと共通のシャシーを採用しながらも、スライドドアを廃止しヒンジドアとすることで、約60kgの軽量化を実現しました。また、エンジンセッティングの変更により燃費性能の向上にも成功しています。

搭載エンジンは、直列3気筒DOHC自然吸気エンジンのKF-VE型と、ターボエンジンのKF-DET型が用意されました。ターボエンジンは、エグゼカスタムの最上級グレード「RS」にのみ搭載され、パワフルな走りを求めるユーザー層に対応しました。

トランスミッションは、2WD車とカスタムRSの4WD車にはCVT（無段変速機）、それ以外の4WD車には4速ATが採用されました。しかし、2010年10月の一部改良では、カスタムRSを除く4WD車もCVTに換装され、燃費向上と走行性能の向上が図られました。

販売と生産終了

タントエグゼは、2009年12月に発売開始されました。キャッチコピーは「軽にくつろぎという革新。」で、CMキャラクターには香取慎吾さんを起用しました。

発売後、エンジンの力強さや走行性能、乗り心地の良さから一定の評価を得ていましたが、販売面では苦戦を強いられました。2010年には富士重工業（現SUBARU）へOEM供給され、「スバル・ルクラ」として販売されましたが、販売台数は低迷し続けました。

2014年9月に生産を終了し、同年10月に在庫販売も終了しました。販売期間は約4年9ヶ月と、同社の他の軽自動車と比較すると比較的短い期間でした。累計販売台数は10万998台に留まりました。スーパートールワゴン市場においてはスライドドアが主流となりつつあり、タントとの競合も激しかった点が、販売低迷の要因の一つと考えられます。

車名由来

車名の「エグゼ」は、「Exceed×Excellent ecology」「Emotional×Elegant design」「Executive space」の略で、優れた環境性能と、上質で快適な空間を提供するクルマであることを表現しています。

まとめ

タントエグゼは、上質な乗り心地とスポーティなデザインを両立した軽スーパーハイトワゴンとして登場しましたが、市場のニーズを捉えきれず、販売面では成功とは言えませんでした。それでも、快適な室内空間と力強いエンジン、そして優れた燃費性能は、多くのユーザーに魅力的に映ったと言えるでしょう。短い販売期間ではありましたが、ダイハツの軽自動車開発の歴史において、重要な役割を果たした車種の一つと言えるでしょう。

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