ダクタイル鋳鉄

ダクタイル鋳鉄について

ダクタイル鋳鉄は、構造中に球状のグラファイトを含む鋳鉄の一種です。この鋳鉄は、その名の通り、鋳造の際に炭素の含有量が高い特性を活かしつつ、強度や延性を大幅に向上させています。「ダクタイル」という言葉は「延性を持つ」という意味であり、この特性は特に金属製品における重要な要素です。ダクタイル鋳鉄は、球状の黒鉛を含むため、他の鋳鉄とは異なり、脆くなることなく優れた靭性を持っています。これは、機械部品や構造物として非常に有用です。

背景

鋳鉄は歴史的に古く、紀元前までその使用が遡ります。鋳鉄は炭素含有率が高く、そのために溶融温度が低く、鋳造工程が比較的容易です。しかし、通常の鋳鉄は固まる際にナット形状や裂け目を形成することが多く、これが脆さの原因となっていました。このため、黒心可鍛鋳鉄と呼ばれる鋳鉄が開発され、長時間の焼鈍を通してグラファイトを改善する方法が考え出されましたが、この方法は高コストで扱いが難しいという欠点がありました。

ダクタイル鋳鉄の発展

1948年に、H.MorroghとW.J.Williamらが非鉄元素の添加を伴う新たな鋳造方法を確立し、溶湯にセリウムを加えることでグラファイトを球状化することに成功しました。これによって、グラファイトへの応力集中が分散され、従来の鋳鉄の脆弱性を克服する道が開かれました。さらに翌年には、より安価なマグネシウムを用いる製法が開発され、これが現在のダクタイル鋳鉄として広まりました。この革新により、多くの製品が黒心可鍛鋳鉄からダクタイル鋳鉄に切り替わっています。

特徴と利点

ダクタイル鋳鉄は鋳放しの状態でも鋼に近い強度を持ち、引張り強さや伸びに優れています。そのため、自動車部品や水道管、さらには重機の部品など、特に強さが求められる分野で利用されています。しかし、普通鋳鉄と比較すると、減衰能（振動吸収能力）は劣っているため、用途によってはねずみ鋳鉄を選ぶこともあります。現在、現代の銑鉄鋳物産業ではこの二つを上手に使い分けながら、高性能な製品が生み出されています。

このような特性を持つダクタイル鋳鉄は、製品の強靭性を求められる分野において、極めて重要な素材となっています。

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