ダシ＝ドルジョ・イチゲロフ

ダシ・ドルジョ・イチゲロフの生涯と遺産

ダシ・ドルジョ・イチゲロフ（1852年 - 1927年）は、ブリヤート族に属する著名なラマ僧です。彼の遺体は現在もブリヤート共和国にあるイヴォルギンスキー・ダツァンに安置され、長い歴史と信仰の象徴として崇められています。

幼少期から仏教への道

イチゲロフは16歳で仏教の道に入ります。アニンスキー・ダツァンで仏教哲理とチベット医学を学び、その際にチベット薬学の薬理学辞典を編纂しました。彼は仏教の深い知識を身につけると同時に、医療にも造詣を深めていきました。

学びと教え

1898年、故郷に帰ったイチゲロフは、ヤンガジンスキー・ダツァンで仏教哲学や声明を教え始めます。彼はその後、ソグション・ダツァンのゲシェーやパンディト＝ハンボ12世として認可され、地域の仏教を振興させる役割を担いました。特に、ロシア帝国内での仏教の指導者として名を馳せ、サンクトペテルブルクにヨーロッパ初の仏教寺院であるグンゼチョイネイ・ダツァンを建立しました。

戦争と支援活動

第一次世界大戦が始まった際には「ブリヤート兄弟社」を設立し、負傷兵の看護や支援を行いました。その功績により、イチゲロフは聖アンナ勲章を受けることになります。医学書も多数著し、彼の知見は多くの人々に影響を与えました。

理想と入滅

1926年のロシア革命が起こると、多くの僧侶が彼に相談を求めましたが、イチゲロフは「国に残る」と決断し、ソビエト連邦に留まります。翌年、彼は75歳で入滅の準備を始め、「30年後に私の体を掘り出してくれ」と後に伝えます。1927年6月15日、彼は静かにこの世を去ります。

死後の難行

1955年、彼の遺体はパンディト＝ハンボ17世ロブサン・ニマ・ダメリンによって掘り起こされ、その保存状態に学者たちは驚きを隠せませんでした。無神論を掲げるソビエト政府により、この出来事は黙殺され、後に無名の墓に再埋葬されてしまいます。

現在の状況

ソビエト連邦が崩壊した後、2002年に再び彼の遺体が掘り出され、イヴォルギンスキー・ダツァンに移されました。2003年にはロシアの仏教全体会議において、イチゲロフの遺体が「即身仏」として認知され、多くの信者に敬われる存在となります。

まとめ

イチゲロフの生涯は、宗教だけでなく、医学や社会への貢献に満ちたものでした。彼の存在は現在でも多くの人々に霊的な影響を与え、仏教の精神的支柱とされています。その不思議な生涯と遺体に対する信仰は、異なる時代を超えて人々の心に残り続けています。

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