ダッグバーティ・ラーマナイドゥ

ダッグバーティ・ラーマナイドゥ：インド映画界の巨匠

ダッグバーティ・ラーマナイドゥ（1936年6月6日 - 2015年2月18日）は、インドを代表する映画プロデューサーであり、短期間ながら政治家としても活動しました。映画製作会社スレーシュ・プロダクションを創設し、生涯にわたって13もの異なる言語で150本以上の作品を手掛けたその功績は特筆され、「世界で最も多くの映画をプロデュースした人物」としてギネス世界記録に認定されています。

インド映画界への多大な貢献が認められ、2012年には同国で3番目に格式の高い勲章であるパドマ・ブーシャンを受章しました。また、インド映画における最高の栄誉とされるダーダーサーヘブ・パールケー賞を2009年に受賞。テルグ語映画界での功績に対してはラグパティ・ヴェンカイアー賞が贈られ、フィルムフェア賞 南インド映画部門でも生涯功労賞を受賞するなど、数多くの賞賛を受けました。

さらに、1991年には「ラーマナイドゥ慈善信託」を設立し、その活動を通じて自身の収入の大部分を恵まれない人々への支援に充てるなど、慈善活動にも熱心でした。

生涯

生い立ちとキャリアの始まり

ラーマナイドゥは、現在のアーンドラ・プラデーシュ州プラカーシャム県にあるカランチェドゥ村の農家に生を受けました。チララで高等教育を修了した後、マドラス管区大学を卒業します。卒業後は精米所のオーナーとして働き、並行して運送業も営んでいました。この時期、彼は映画への情熱を抱き、『Nammina Bantu』という作品への出資を父親に働きかけます。彼の情熱に感銘を受けた主演俳優アッキネーニ・ナゲシュワラ・ラオの勧めもあり、ラーマナイドゥは映画製作者になるべくマドラスへ向かう決意を固めました。1962年、彼は精米所を閉鎖してマドラス（現チェンナイ）に転居しました。

マドラス移住後、当初はレンガ製造業を計画していましたが、最終的には不動産業を展開します。この間、「アーンドラ・クラブ」に頻繁に通い、テルグ語映画界の関係者たちとの親交を深めていきました。

プロデューサーとしての飛躍

1963年、ラーマナイドゥは友人たちと共に初めて映画製作に挑戦しますが、『Anuragam』と題されたこの作品は商業的には失敗に終わります。しかし、彼は諦めず、自身の映画製作会社であるスレーシュ・プロダクションを設立し、翌1964年に『Ramudu Bheemudu』を製作しました。1970年代初頭まではテルグ語映画を中心に精力的に製作を続けましたが、『Ramudu Bheemudu』以外に目覚ましい興行的成功を収めた作品は少なかったとされています。

マドラスでの活動中に、彼は高名なプロデューサー、B・ナギ・レッディの息子と共同でヴィジャヤ・スレーシュ・コンバインという製作会社も設立しました。転機となったのは1971年に製作した『Prema Nagar』です。アッキネーニ・ナゲシュワラ・ラオとヴァニシュリが主演したこの作品は記録的な大ヒットとなり、タミル語版『Vasantha Maligai』、ヒンディー語版『Prem Nagar』としてもリメイクされました。これらのリメイク版もラーマナイドゥがプロデューサーを務め、いずれも大きな成功を収めました。1970年代には、『Namma Kuzhaindagal』や『Tirumangalyam』など、タミル語映画の製作も手掛けるようになります。

1983年、ラーマナイドゥはテルグ語映画製作の中心地をマドラスからアーンドラ・プラデーシュ州内へ移すことを目指し、州政府の支援を得てハイデラバードにラーマナイドゥ・スタジオを設立しました。これを機に、彼はテルグ語、タミル語だけでなく、カンナダ語、ヒンディー語、マラヤーラム語、マラーティー語、ベンガル語、オリヤー語、グジャラート語、ボージュプリー語、パンジャーブ語といった、実に多様な言語での映画製作に乗り出します。特にヒンディー語映画では、『Tohfa』や『Anari』などのヒット作を生み出しました。

2008年、「世界で最も多くの映画をプロデュースした人物」としてギネス世界記録に認定されました。生涯を通じて13言語、150本を超える作品を世に送り出し、その業績は前人未踏の領域でした。

また、ラーマナイドゥは自身の製作する映画に俳優として出演することもあり、2006年製作の『Hope』では主要キャストの一人を演じました。この作品は、教育によるストレスが原因で増加する10代の自殺問題という社会問題を扱っており、第54回国家映画賞でその他の社会問題に関する映画賞を受賞しています。

政治家としての活動

ラーマナイドゥはテルグ・デサム党に所属し、1999年から2004年までの5年間、第13期ローク・サバー（インド下院）の議員として、故郷であるグントゥール県から選出されました。しかし、2004年の第14期議員選挙では落選したため、議員生活は1期で終えました。

慈善活動

映画製作で得た収益を社会還元するため、1991年に「ラーマナイドゥ慈善信託」を設立しました。彼はこの信託を通じて、収入の大部分を様々な慈善活動のために活用し、社会貢献にも尽力しました。

家族

1958年に結婚し、2男1女をもうけました。長男のダッグバーティ・スレーシュ・バーブは著名な映画プロデューサーとして父の事業を継承し、次男のヴェンカテーシュ・ダッグバーティは人気の俳優として活躍しています。ラーマナイドゥには8人の孫がおり、そのうちラーナー・ダッグバーティとナーガ・チャイタニヤもまた、インド映画界で俳優として成功を収めています。彼の家族は、インド、特にテルグ語映画界において非常に影響力のある存在となっています。

晩年と死去

2014年1月、ラーマナイドゥが前立腺癌を患っていることが公表されました。そして、2015年2月18日、彼はハイデラバードでその波乱に満ちた生涯を閉じました。彼の死去の報に接し、チランジーヴィ、アッキネーニ・ナーガールジュナ、パワン・カリヤーンといったテルグ語映画界のスターたちをはじめ、多くの関係者やファンから哀悼の意が表明されました。

ラーマナイドゥは、前例のない製作本数によるギネス記録、多言語・多ジャンルへの挑戦、そして慈善活動に至るまで、インド映画界に計り知れない功績を残しました。彼の情熱と革新性は、今なお多くの映画人に影響を与え続けています。

主な受賞歴

パドマ・ブーシャン勲章（2012年）
ダーダーサーヘブ・パールケー賞（2009年）
国家映画賞
ベンガル語長編映画賞（1999年 - 『Asukh』）
その他の社会問題に関する映画賞（2006年 - 『Hope』）
ラグパティ・ヴェンカイアー賞（2006年）
フィルムフェア賞 南インド映画部門生涯功労賞（2000年）
ナンディ賞 作品賞（2001年 - 『Preminchu』）
タミル・ナードゥ州映画賞 作品賞（1970年 - 『Namma Kuzhanthaigal』, 1977年 - 『Madhurageetham』）
フィルムフェア賞 南インド映画部門 テルグ語映画部門作品賞（1973年 - 『Jeevana Tarangalu』, 1976年 - 『Soggadu』）
* シュリ・ヴェンカテーシュワラ大学名誉学位

彼はその生涯を映画に捧げ、プロデューサーとしてのみならず、人としても多くの人々に影響を与えた偉大な人物でした。

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