ダナエ (コレッジョの絵画)

コレッジョの傑作『ダナエ』

コレッジョが1531年頃に描いた『ダナエ』は、ルネサンス美術を代表する作品の一つです。この絵画は、ギリシア神話に登場する美しい王女ダナエと、主神ゼウスの愛の物語を描いています。現在、この作品はローマのボルゲーゼ美術館に所蔵されており、多くの人々を魅了し続けています。

神話に基づいた官能的な描写

ダナエは、アルゴス王アクリシオスの娘であり、彼女が出産する男児が将来アクリシオスを殺害するという神託を受け、父王によって青銅の塔に幽閉されていました。しかし、ゼウスは黄金の雨に姿を変えてダナエのもとに現れ、彼女を誘惑します。コレッジョは、この神話のエピソードを、非常に官能的に描いています。

絵の中央に描かれているダナエは、ベッドにもたれかかり、雲から降り注ぐ黄金の雨を恍惚とした表情で見つめています。彼女のそばには、愛の神エロスがおり、ダナエの身につけている布を脱がそうとしています。ベッドの下には、黄金の雨を舐める二人のプットー（幼い天使）が描かれ、また、鉛の矢が石の上に置かれています。これらの細部描写は、作品の寓意性を高めています。

作品の来歴

『ダナエ』は、マントヴァ公爵フェデリーコ2世・ゴンザーガの依頼によって制作されました。彼は、ゼウスの愛の物語を描いた連作の一部として、この作品を制作しました。連作は、テ宮殿の「オウィディウスの間」に飾られる予定でした。フェデリーコ2世の死後、『ダナエ』はスペインへと渡り、その後、様々な所有者の手を経ています。

16世紀には、ミラノのレオーネ・レオーニのコレクションとして記録されています。その後、レオーニの息子によって神聖ローマ皇帝ルドルフ2世に売却され、さらにスウェーデン王グスタフ2世アドルフの戦利品としてストックホルムへと持ち去られました。グスタフ2世アドルフの死後、スウェーデン女王クリスティーナは、この作品をローマへと持ち帰り、その後、枢機卿デシオ・アッツォリーノ、ブラッチャーノ公爵リヴィオ・オデスカルキ、フランス王ルイ15世の摂政オルレアン公フィリップ2世など、様々な所有者の手に渡りました。

1792年には、オルレアン・コレクションの一部としてイングランドに売却され、その後、第3代ブリッジウォーター公フランシス・エジャートンやヘンリー・ホープなどの著名な収集家のコレクションに加わりました。そして、最終的には、ナポレオンの妹ポーリーヌの夫であるスルモーナ公カミッロ・フィリッポ・ボルゲーゼによって購入され、ボルゲーゼ家のコレクションに加わりました。現在、この作品はボルゲーゼ美術館で、その壮麗な姿を公開しています。

関連作品

ダナエを題材とした絵画は、コレッジョ以外にも多くの画家によって描かれており、それぞれの時代や画家の個性が表れています。

グスタフ・クリムト『ダナエ』
ヤン・ホッサールト『ダナエ』
ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『ダナエ』
レンブラント・ファン・レイン『ダナエ』

これらの作品と見比べることで、それぞれの画家の解釈や表現方法の違いを楽しむことができます。

まとめ

コレッジョの『ダナエ』は、ギリシア神話を題材にした美しい絵画です。その官能的な描写と、複雑な来歴は、この作品の魅力をさらに深めています。ローマのボルゲーゼ美術館に訪れた際には、ぜひこの傑作を鑑賞してください。

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