ダニエラ・ビアンキ

ダニエラ・ビアンキ

ダニエラ・ビアンキ（Daniela Bianchi）は、1942年1月31日にイタリアのローマ、あるいはラツィオ州で生まれた女優、そしてモデルです。祖母が侯爵夫人、父が軍大佐という家系の出身で、プリンセスに次ぐとされる地位を持つ裕福な家庭環境で育ちました。

幼少期から規律正しい生活を送り、少女時代にはバレエを習っていましたが、成長と共にその魅力的な容姿を生かせるファッションモデルの道に関心を移します。1960年にはミス・ローマに選ばれ、ラツィオ州代表として出場したミス・ユニバース・イタリアで優勝を果たしました。同年開催されたミス・ユニバース世界大会では、アメリカ代表に次ぐ総合第2位という素晴らしい成績を収め、同時にミス・フォトジェニックも受賞しています。一部資料には1962年のミス・イタリア優勝とする記述も見られますが、公式サイトでは確認されていません。ミス・ユニバースでの成功を機に、彼女のモデル活動は国際的な広がりを見せました。

女優としてのキャリア

モデルとしての活躍と並行して、女優としての活動も開始します。イタリアのテレビ番組でロッサノ・ブラッツィと共演したことがきっかけとなり、映画界への道を歩み始めました。1958年にはイタリア映画『En cas de malheur』に出演し、これがスクリーンデビューとなります。

彼女の女優キャリアにおける最大の転機は、1963年の映画『007 ロシアより愛をこめて』への出演でした。ボンドガールであるタチアナ・ロマノワ役に抜擢されたことで、彼女はハリウッドデビューを果たし、国際的な名声を獲得しました。この作品はまさに彼女の出世作と言えます。この成功を受けて、ハリウッドでのさらなるキャリアアップを目指しますが、英語の習得が進まなかったことが大きな壁となりました。本格的な演技活動としては、1968年公開の『The Last Chance』が最後に確認されている作品です。その後、1970年の結婚を機に、家族との時間を優先するために映画産業から身を引きました。ただし、2012年にはドキュメンタリー映画『We’re Nothing Like James Bond.』に出演し、再びその姿を見せています。

『007 ロシアより愛をこめて』の舞台裏

『007 ロシアより愛をこめて』のボンドガール選考では、200人を超える候補者の中から、イタリアの雑誌で彼女の写真を見た監督のテレンス・ヤングがロンドンに召喚し、その出演が決まりました。撮影当時21歳だった彼女は、メインのボンドガールとしては当時最年少でした。

一説によると、彼女自身は女優という仕事にそれほど深い関心を持っていなかったとも言われています。撮影現場でもチョコレートを食べたり、イタリアの小説を読んだりするなど、マイペースに過ごす姿が見られました。監督に注意されても気にしないその図太さは、主演のショーン・コネリーからも好感を持たれたと伝えられています。撮影期間中には、運転手の居眠り運転による交通事故に巻き込まれ、顔に怪我を負ってしまい、撮影が2週間延期されるというアクシデントもありました。

この作品は、およそ10年間の女優キャリアの中で、彼女にとって唯一の英語作品となりました。しかし、映画本編に残る彼女の声は、実は彼女自身の声ではありません。強いイタリア語なまりのある英語だったため、バーバラ・ジェフォードによって吹き替えられています。イタリア語版の吹き替えは、マリア・ピア・ディ・メオが担当しました。彼女はかろうじて英語を話せる程度だった、という証言もあります。実際に1964年のインタビューでは、ロサンゼルスの複雑な道路網を理解できていないと語っています。ちなみに、この映画には、ミス・ユニバース1960でイスラエル代表としてトップ15に入り、大会中彼女のルームメイトだったアリジャ・ガーや、ミス・ジャマイカ経験者のマルティーヌ・ベズウィックも出演しており、ミスコン出場者たちの意外な繋がりが見られます。

私生活

1970年、ダニエラ・ビアンキはジェノヴァ出身の海運会社経営者であるアルベルト・カメリ氏と結婚しました。二人の間には一人の息子がいます。

短い女優キャリアではありましたが、『007 ロシアより愛をこめて』のボンドガールとして、世界中の映画ファンに強い印象を残したダニエラ・ビアンキは、その美貌と存在感で今なお語り継がれています。

主な出演作品

1958年：『En cas de malheur』（クレジットなし）
1961年：『Les Démons de minuit』
1962年：『Una domenica d'estate』、『La spada del Cid』
1963年：『007 ロシアより愛をこめて』（タチアナ・ロマノワ役）
1964年：『Dr. Kildare』（テレビシリーズ、3エピソード）、『暗殺指令 虎は新鮮な肉を好む』
1965年：『Slalom』
1966年：『L'ombrellone』、『Balearic Caper』、『地獄の挑戦状』（レディ・アラベラ・チャップリン役）、『Requiem per un agente segreto』
1967年：『国際泥棒組織』（アラベラ役）、『アルデンヌの戦い』（マヤ・ラフィス役）、『Dalle Ardenne all'inferno』（クリスティーナ・フォン・カイスト役）
1968年：『Scacco internazionale』（ヘレン・ハリス役）
2012年：『Noi non siamo come James Bond』（本人として）

出典：IMDb 他

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