ダラ・シン

ダラ・シン・ランダワ：レスリングの英雄から映画スター、そして政治家へ

ダラ・シン・ランダワ (1928年11月19日 - 2012年7月12日) は、インドにおける伝説的な存在です。プロレスラーとして世界的な名声を博し、その後は俳優、政治家として活躍、インドのエンターテインメント界と政界に多大な影響を与えました。彼の生涯は、並外れた身体能力、類まれな演技力、そして政治への情熱が凝縮された、まさにドラマチックな物語です。

生い立ちとレスリングでの活躍

1928年、インドのパンジャーブ州で生まれたダラ・シンは、幼い頃から逞しい体格で知られていました。若き日にシンガポールに移住し、そこでレスリングのトレーニングを開始。188cmの長身と127kgの体重を誇る巨漢は、インド伝統のレスリングスタイルであるパハラワーニーを武器に、世界中の強豪レスラーと激闘を繰り広げます。

ビル・ヴァーナ、フィルポ・ズビスコ、力道山といったそうそうたるレスラーたちとの対戦は、彼の名を世界に轟かせました。中でも、キングコングとの死闘は、多くのファンの記憶に今も深く刻まれています。数々のタイトルを獲得し、無敗の連勝記録を打ち立てた彼のレスリングキャリアは、まさに輝かしいものでした。しかし、彼のキャリアは決して順風満帆ではありませんでした。カルカッタでの試合では、僅か2分半で敗北を喫した苦い経験もあります。それでも彼は、その経験から学び、更なる高みを目指し続けたのです。1983年、華々しい勝利を収めた後、レスリング界から引退しました。

映画・テレビ界での成功

レスリングでの成功は、ダラ・シンに新たな可能性を開きました。1952年、俳優として映画デビューを果たします。当初はスタントマンとして活躍していましたが、1962年、映画『キングコング』で初主演を果たし、人気俳優への道を歩み始めます。女優ムムターズとの共演作も多数あり、その高い人気は、映画界においても確固たる地位を築くこととなりました。1本あたり約40万ルピーという高額なギャラを受け取っていたことも、彼の圧倒的な人気を示しています。

1980年代後半からはテレビドラマにも進出。国民的ドラマ『ラーマーヤナ』でのハヌマーン役は、彼を一躍国民的スターへと押し上げました。その他にも、『Veer Bheem Sen』や『Ramayan』といった多数の作品に出演し、ヒンドゥー神話に基づいた映画ではシヴァ役など、多くの重要な役を演じました。彼の演技は、多くの観客の心を捉え、インド映画史に大きな足跡を残しました。映画製作にも携わり、自身の映画会社「ダラ・フィルム」を設立し、監督としても活躍しました。

政治家としての活動

ダラ・シンは、スポーツ界での活躍にとどまりませんでした。1998年にはインド人民党に入党、2003年から2009年までインド国会上院議員を務めました。スポーツ選手出身の議員としては初めてのことであり、その経歴はインド政治史に新たな一ページを刻んだと言えます。彼はまた、ジャート・マハーサバーの総裁も務め、政治家としても大きな影響力を持ちました。

死後と評価

2012年7月12日、ムンバイの自宅で死去。享年83歳でした。彼の死は、インド中に衝撃と悲しみをもたらしました。彼の功績をたたえ、1996年にはレスリング・オブザーバー・ニュースレター殿堂入りを果たし、2018年にはWWE殿堂入りを果たしました。現在でもインドでは、レスリング界、映画界、そして政治界において、偉大な人物として記憶されています。その名は、インドのスポーツとエンターテイメントの歴史に永遠に刻み込まれています。彼の息子ヴィンドゥ・ダラ・シンは、彼の功績を後世に伝えるため、彼の生涯を描いたコミックを出版しました。ダラ・シン・ランダワの生涯は、困難を乗り越え、成功を収めた、真のヒーローの物語です。

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