ダラーウィーシュ国

ダラーウィーシュ国とは

ダラーウィーシュ国（英語名: Dervish State）は、1899年から1920年まで存在した国で、厳正な階級制中央集権国家でした。現在のソマリランドや、エチオピア北東部に位置していました。

歴史

1899年、ムハンマド・アブドゥラー・ハッサンは、キリスト教徒の追放とイギリス勢力の排除を目的にダラーウィーシュ国を建国しました。この方針が、キリスト教国であるエチオピア、イタリア、そしてイギリスとの関係悪化を招き、対ダラーウィーシュ連合軍が結成される事態となります。

1900年末、エチオピア皇帝メネリク2世はイギリスに働きかけ、共同でダラーウィーシュを攻撃することを提案。イギリスはこれに応じ、スウェイン中佐（E.J. Swayne）にヨーロッパ人顧問20人とソマリ兵1500を与え、1901年5月22日にイギリス領ソマリランド中部の町ブルコから出撃させました。エチオピアも1万5千の兵を送りました。対するダラーウィーシュ軍は兵力2万、その4割が騎兵でした。

1901年から1904年にかけてはダラーウィーシュ軍が優勢で、イギリス軍、エチオピア軍、さらにはイタリア軍にまで大きな損害を与えました。これは、イギリスが第二次ボーア戦争（1900年 - 1902年）に注力していたため、ソマリア方面に十分な戦力を割けなかったことが背景にあります。このような状況下で、ムハンマドを宗教的指導者と認めなかった他のソマリ族も、次々とムハンマドへの協力を表明しました。

1904年1月9日、イギリスの将軍チャールズ・エガートン（Charles Egerton）がジダーリ平原でダラーウィーシュ軍7千を殺害する勝利を収めました。ムハンマドらはマジーティーン族の支配地に逃亡し、3月21日にイリグ（現エイル）に到着、以後数年間ここを拠点としました。1910年頃には、ムハンマドの横暴に怒った600人が大木の下で密会し、離脱する事件が起こりました。ムハンマドはこれに怒り「大木の下での密会（Anjeel tale waa）」と題する詩を作っています。しかしイギリスはムハンマドらに決定的なダメージを与えることができず、ムハンマドらの本拠地であるヌガールを、イタリアの保護下に置かれることを条件に自治権を認め、イギリスとムハンマドは一時的に和解しました。

しかし1920年初頭、イギリス軍は無差別爆撃と陸上攻撃でダラーウィーシュを攻撃し、大勝利を得ました。バハン、ジダリ、タレーなど各地でムハンマドらは大損害を受け、オガデンに逃亡し、オガデン族の協力を得ることで軍の建て直しを図りました。イギリスは和平交渉のための使者団を派遣し、イギリス領ソマリランドの西部に土地を与えると持ちかけてきましたが、ムハンマドはその提案を拒否し、帰路の使者団を襲わせさえしました。

その後、オガデンの地を天然痘と牛疫が襲い、ダラーウィーシュの半数近くが被害を受けました。イギリスはその機を逃さず、ソマリア人ハージ・ワラーベ（Haaji Waraabe）らを派遣し、残りのダラーウィーシュを打ち破りました。ハージ・ワラーベはこの戦いで60,000匹の家畜を得ましたが、ムハンマドの捕獲には失敗。ムハンマドは仲間と共にオロモ人の一族アルシ・オロモ（Arsi Oromo）が支配するエチオピアの地に逃げ込みました。

1920年12月21日、指導者であったムハンマドは64歳で病死。ムハンマドの死により、ダラーウィーシュ国は崩壊しました。

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