チェファル大聖堂

チェファル大聖堂：ノルマン建築の壮麗な遺産

チェファル大聖堂（Duomo di Cefalù）は、イタリア南部、シチリア島のチェファルに位置する、ノルマン建築を代表する壮大な大聖堂です。その歴史は12世紀に遡り、1131年に建設が開始されました。この大聖堂は、イタリアの指定保護文化財建造物であり、2015年にはパレルモの建造物群と共にユネスコの世界遺産に登録されています。

建設の背景と歴史

チェファル大聖堂の建設は、1091年にノルマン人に征服されたシチリア島において、ノルマン王ルッジェーロ2世が「聖なる救い主」に誓いを立てたことがきっかけとされています。伝説によれば、ルッジェーロ2世が嵐から逃れ、チェファルの浜に上陸した際にこの誓いを立てたとされています。大聖堂は、要塞のような堅牢な外観を持ち、その姿は遠くから見ても周囲の中世の町のスカイラインを威圧するほどです。これはノルマン人の権威を強く示すものでした。

大聖堂が建設された場所は、かつて人が住んでいた地域であり、ローマ時代の道路やキリスト教以前のモザイクの存在がそれを物語っています。建設は1131年に始まり、アプスのモザイクは1145年に着工されました。ルッジェーロ2世は、自身の墓と妻の墓のために用意した石棺をこの年に定位置に置きました。しかし、1172年以降、大聖堂は一時的に衰退期を迎えました。1215年には、ホーエンシュタウフェン朝のフリードリヒ2世によって二つの石棺がパレルモ大聖堂に移されました。その後、大聖堂の建設は再開され、ファサードは1240年に完成しました。1267年には、アルバーノ司教によって大聖堂が奉献されました。15世紀には、コモのアンブロジオによってファサードの塔の間にポルチコが追加されました。

建築様式の特徴

大聖堂の前には、かつて墓地であった大きなパルヴィス（広場）が広がっています。伝説によれば、この広場はエルサレムから取り寄せた土で造られ、その土には死体を急速にミイラ化させる性質があると信じられていました。ファサードには、ムリオン付きの窓がある二つのノルマン様式の大きな塔がそびえ立ち、15世紀には各々の塔に小さな尖塔が追加されました。これらの尖塔はそれぞれ異なり、一つは正方形で教皇の権威と司教冠を象徴する炎の形をしたマーロンで囲まれ、もう一つは八角形で王室と世俗の権力を象徴するギバリン・マーロンを備えています。

15世紀に追加されたポルチコは、3つのアーチを持ち、外側の2つは尖っており、4本の柱とヴォールトを形成するリブで支えられています。ポルチコの下には、装飾が施された大理石のポータル「ポルタ・レグム（王の扉）」があり、その両側には壁画が描かれていました。

大聖堂の内部はラテン十字の構造を持ち、ネイブと2つの側廊が柱のアーケードで区切られています。14本の柱はピンクの花崗岩で、2本はシポリン（大理石の一種）でできています。これらの柱の基部と柱頭は2世紀のものと考えられています。ネイブの凱旋門を支える大きな柱頭は、12世紀中頃にプッリャ州の作業場で制作された可能性が高いです。ネイブの屋根は低く、トランセプトはネイブと側廊よりも高くなっています。建物は一部がバレル・ヴォールト、一部が開放的な木材屋根ですが、プレスビテリー（内陣）は石のリブ・ヴォールト構造です。

クロッシング（交差部）の向こう側は、壮大でシンプルなロマネスク様式でありながら、尖りアーチが組み合わされています。この特徴はモンレアーレ大聖堂にも見られ、数年後にパリ周辺で発展するゴシック様式の先駆けとされています。

教会には3つのアプス（後陣）があり、この配置はシチリアのモンレアーレ大聖堂にも共通しています。低い側面のアプスは、小さな交差アーチと彫刻されたコーベルからなるブラインド・アーケードで飾られています。コーベルは1215年から1223年のもので、マスク、動物の頭部、人間の像がねじれた位置に配置されています。中央のアプスのコーベルはより最近のものです。中央のアプスには、元々3つの大きなオクルス（円形の窓）がありましたが、後に閉鎖され、モザイクと尖りアーチを持つ中央の大きな窓が設けられました。トランセプトの端には、もう2つの丸窓があります。

回廊

大聖堂には、内部からアクセスできる回廊があります。アーケードには尖りアーチがあり、各アーチは細い一組の柱の上に配置されています。この回廊の形式は、スペインやフランスの回廊のものと類似しています。組になった柱の合成柱頭はノルマン様式であり、他のものはロマネスク様式のモチーフを持っています。この回廊は、その後のシチリアにおけるノルマン様式の回廊、特にモンレアーレ大聖堂の回廊のモデルとなりました。

モザイク

大聖堂全体をモザイクで装飾する計画がありましたが、実際に完成したのは内陣の領域のみでした。現在、モザイクは後陣と側廊の半分を覆っています。モザイク制作のため、ルッジェーロ2世はコンスタンティノープルからモザイク職人を呼び寄せました。彼らはビザンティン様式の装飾芸術を、北ヨーロッパに起源を持つ建築構造に適用しました。

装飾の中心となるのは、アプスの半ドームに描かれた全能のキリスト（キリスト・パントクラトール）です。キリストは、祝福を与えるために手を上げ、左手にはギリシャ語とラテン語で「私は世の光であり、私に従う者は暗闇の中をさまようことなく、命の光を持つ」と書かれた「ヨハネによる福音書」を持っています。アプスの上部には、聖母マリアが両手を上げて祈り、その両側には4人の大天使が描かれています。2段目と3段目には、使徒と福音伝道者が、神学的な計画に基づいて配置されています。

モザイクの装飾は内陣まで続き、側壁には預言者や聖人の姿が描かれています。右側の壁には王族の肖像が、左側の壁には聖職者の肖像が、それぞれ王座や司教座に隣接して配置されています。各肖像には、ギリシャ語またはラテン語の銘文が添えられ、その人物を示しています。交差ヴォールトの天井には、4人の智天使と4人の熾天使が描かれています。主要な人物像（キリスト・パントクラトールと聖母マリア）は青色の服をまとい、黄金のタイルの背景の中で輝いています。その描写は非常に精巧で、衣服のひだや顔の表情、身振りは優雅さを備えています。これらのモザイクは、イタリアで最も美しいビザンティン様式のモザイクとされ、コンスタンティノープルの他の後期ビザンティン作品と比較することができます。

ビザンティン様式のモザイクは1170年までに完成しました。内陣の下の部分と側壁のモザイクは17世紀まで完成せず、それ以前の絵画を覆い隠しました。そのかすかな痕跡は今日でも残っています。

まとめ

チェファル大聖堂は、その歴史的な背景、見事な建築様式、そして美しいモザイク装飾によって、シチリアを代表する重要な文化遺産の一つです。この大聖堂は、ノルマン建築の傑作として、またビザンティン美術の影響を受けた貴重な遺産として、世界中から訪れる人々を魅了し続けています。

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