チェブジェン

セネガルの至宝：チェブジェン

チェブジェン(Thieboudienne)は、西アフリカの国セネガルで親しまれる、国民的な米料理です。ウォロフ語で「チェブ」は米、「ジェン」は魚を意味し、その名の通り、魚介の旨味を凝縮したスープで炊かれたご飯が特徴です。セネガル料理の中でも特に洗練され、国民的な誇りとして愛されている料理の一つと言えるでしょう。

チェブジェンの作り方

チェブジェンの調理工程は、複雑ながらも奥深い魅力に溢れています。まず、大鍋にたっぷりの落花生油を熱し、ニシン科の魚（ヤーボイが一般的）の切り身、みじん切りのニンニク、玉ねぎをじっくりと油で煮込みます。そこに、みじん切りのトマトとトマトピューレを加え、さらに15分ほど煮詰めていきます。

次に、たっぷりの水を鍋に加え、ナス、キャベツ、ダイコン、ニンジン、カボチャなどの野菜を皮をむいて食べやすい大きさに切り、鍋に入れます。ナツメグ、ショウガ、クミン、トウガラシなどのスパイスを、料理のバランスを見ながら適宜加えていきます。好みで固形ブイヨンを加えるのも良いでしょう。

インディカ米は軽く洗い、専用の容器（甑など）に入れます。この容器を、魚介と野菜を煮込んでいる大鍋の上に置き、大鍋から立ち上る蒸気で米を蒸します。約15分間蒸したら、鍋から野菜や魚などの具材を取り出し、残った煮汁に蒸した米を加えて炊き上げます。

炊き上がったご飯を皿に盛り付け、取り分けておいた魚介と野菜を添えて完成です。彩り豊かで、食欲をそそる一皿となります。

歴史と文化：一つの鍋から生まれた伝統

セネガル料理には「ベンナ・チン」(一つ鍋)と呼ばれる調理法があります。肉や魚、野菜を炒めて煮込み、その煮汁でご飯を炊く、一種の炊き込みご飯です。チェブジェンは、このベンナ・チンの代表的な料理と言えるでしょう。

一説によると、チェブジェン発祥の地は、セネガル川河口の港町サンルイと言われています。サンルイはかつて、欧米への奴隷貿易の中心地でもありました。この地から連れ去られたウォロフ族の人々は、北米の農園で、魚の代わりに肉を使って同様の炊き込みご飯を作り、それが「チェブ・ヤップ」（肉ご飯）として伝わりました。

このチェブ・ヤップは、アメリカで「ジョロフライス」（ウォロフ人のご飯）として定着し、現在ではアメリカで最もポピュラーなアフリカ料理の一つとなっています。チェブジェンとジョロフライスは、歴史と文化を繋ぐ重要な料理と言えるでしょう。

チェブジェンを味わう

現在、チェブジェンはセネガルの家庭で広く食べられているだけでなく、首都ダカールのフランス料理店などでも味わうことができます。伝統的な家庭料理から、洗練されたレストラン料理まで、幅広い場所で楽しめるのも、チェブジェンの魅力の一つです。セネガルを訪れた際には、ぜひ本場のチェブジェンを味わってみてください。その豊かな風味と、歴史に裏打ちされた奥深い味わいに、きっと魅了されることでしょう。

もう一度検索