チェンジズ

チェンジズ (Changes)

「チェンジズ」は、デヴィッド・ボウイが1971年に発表した楽曲であり、彼の代表作の一つであるアルバム『ハンキー・ドリー』に収録されています。その後、アルバムからのシングルカットとして1972年 1月14日にリリースされました。この曲は、ボウイ自身が当初「ナイトクラブの曲のパロディとして始めた、いわば軽い気持ちで作った曲」と語っていたにもかかわらず、発表されるやいなやファンの間で熱狂的な人気を博し、彼のキャリアを通じて重要な位置を占めることになりました。

制作背景

この楽曲が誕生したのは、1971年初頭のことです。デヴィッド・ボウイはアメリカでのプロモーション・ツアーを終えてロンドンに戻り、創作意欲に燃え盛る中で35曲以上の新曲を生み出しました。「チェンジズ」もその豊穣な時期に書かれた楽曲群の一つです。同年6月には、ボーカルとピアノのみによる初期のデモ録音が行われました。この時点での歌詞は、後に正式にリリースされたバージョンとは若干異なっていたことが知られています。

音楽的な特徴と評価

「チェンジズ」の音楽性は、一般的なポップソングの枠に収まらない独特な魅力を持っています。楽曲の根幹は4分の4拍子で構成されていますが、随所に4分の2拍子や4分の3拍子が織り交ぜられており、聴く者に予測不能なリズム感を与えます。特に4分の3拍子のセクションでは、小節ごとにコードが変化するという特徴的な手法が用いられています。

楽曲の冒頭を飾るイントロのコード進行（D♭6 - Dm7 - E♭7 - F7）は、その革新性ゆえに音楽評論家のウィルフリード・メラーズから「アナーキーに近い」「正統な音楽理論に反している」と評されるほど実験的なものです。しかし、その後のコード進行（Cmaj7 - Dm7 - Fmaj7 - E♭7）については、評論家のクリス・オリアリーが「これこそボウイの真骨頂だ」と称賛するなど、その非凡なメロディーとコードワークが高く評価されています。こうした音楽的な冒険心が、「チェンジズ」を単なるポップソングではない、奥行きのある作品にしています。

シングルと制作チーム

1972年 1月14日にシングルとしてリリースされた際の収録内容は以下の通りです。

A面：チェンジズ (Changes) - 3:33
B面：アンディ・ウォーホル (Andy Warhol) - 3:52

この楽曲の制作には、デヴィッド・ボウイ自身がリードボーカルを務めるだけでなく、アルトサックスとテナーサックスでも参加しています。レコーディングを支えたミュージシャンは以下の通りです。

ミック・ロンソン：ギター、ストリングスアレンジ、バックボーカル
トレヴァー・ボルダー：ベースギター
ミック・ウッドマンジー：ドラム
リック・ウェイクマン：ピアノ
不明のミュージシャン：バイオリン、ビオラ、チェロ

プロデューサーはデヴィッド・ボウイとケン・スコットが共同で務め、ケン・スコットがエンジニアも担当しました。

その他の収録作品

オリジナルアルバム『ハンキー・ドリー』以外にも、「チェンジズ」はデヴィッド・ボウイの重要な楽曲として、多くのベストアルバムやライブ盤に繰り返し収録されています。主な収録作品としては、以下のタイトルが挙げられます。

『デヴィッド・ボウイ・ライブ』 (1974)
『魅せられし変容〜ベスト・オブ・デヴィッド・ボウイ』 (1976)
『ジギー・スターダスト・ザ・モーションピクチャー』（映画サウンドトラック） (1983)
『チェンジスボウイ』 (1990)
『ザ・シングルス・コレクション』 (1993)
『ベスト・オブ・ボウイ』 (2002)
『プラチナム・コレクション』 (2005)

このように、時代を超えて様々な形でリスナーに届けられ続ける「チェンジズ」は、絶えず変貌を遂げながら革新的な音楽を追求し続けたデヴィッド・ボウイというアーティストの精神を象徴する、まさにその名の通りの一曲と言えるでしょう。

もう一度検索

チェンジズ