チクロ

チクロ（サイクラミン酸ナトリウム）とは

チクロ（サイクラミン酸ナトリウム、IUPAC名: sodium N-cyclohexylsulfamate）は、砂糖の30倍から50倍の甘さを持つ人工甘味料です。砂糖に近いすっきりした甘味が特徴ですが、高濃度ではわずかに苦味を感じることがあります。

1937年にアメリカ合衆国のMichael Svedaによって発見されました。

製法

チクロは、スルファミン酸とシクロヘキシルアミンの混合物に水酸化ナトリウムを反応させることで製造されます。

安全性に関する問題と経緯

1969年、アメリカ食品医薬品局（FDA）がチクロに発がん性や催奇形性の疑いを指摘し、アメリカ合衆国とカナダで使用が禁止されました。これを受け、日本でも農林省が使用中止を要請し、清涼飲料水メーカーが自主規制に同意。同年中に食品添加物としての指定が取り消され、チクロの使用が禁止されました。

しかし、その後の追試験では発がん性などの疑いは再現されず、ヨーロッパでは問題視されませんでした。1972年にはスイス連邦政府がチクロの無害性を発表しています。製造元のアボット・ラボラトリーズがFDAに規制撤廃を働きかけましたが、実現には至りませんでした。

現在、チクロは中国、カナダ、EUなど約55ヶ国で使用されています。各国で食品行政の対応が異なるため、輸入食品回収の原因となることもあります。

日本では1969年11月に使用が禁止され、清涼飲料水は1970年1月、その他の食品は同年2月、缶詰・瓶詰は同年9月までに回収されました。同年12月には、チクロを取り扱う業者が、有害性を示すデータがないまま製造販売を禁止したのは不当だとして厚生省を訴えましたが、消費者の不信感は払拭されませんでした。

チクロを使用していた食品やお菓子は、甘味料の変更を余儀なくされ、味の変化や価格上昇により売り上げを落とし、市場から姿を消した商品もあります。当時は、チクロ不使用を示す「全糖」という表示も見られました。これを機に、砂糖や天然由来の甘味料、アミノ酸ベースの甘味料への切り替えが進み、現在に至るまで販売されている商品もあります。

1982年、JECFA（WHO/FAO合同食品添加物専門家会議）は、チクロの1日許容摂取量を体重1kgあたり11mgとしました。この量は菓子類などに使用するには問題ない量ですが、日本では他の甘味料が普及しているため、企業が積極的にチクロを使用することはなく、安全性に関する再評価も行われていません。

しかし、規制の継続が輸入食品の回収・廃棄につながり、食品ロスを引き起こしているという指摘もあります。

チクロの密売事件

1971年10月には、大阪府警察が販売禁止となっていたチクロ入りのサクランボ缶詰を販売していた会社を食品衛生法違反の疑いで家宅捜索し、経営者を取り調べています。

まとめ

チクロは、かつて安全性への懸念から使用が禁止されたものの、その後の研究で安全性が確認され、現在では多くの国で使用されている人工甘味料です。しかし、日本では過去の経緯から依然として使用が禁止されており、食品業界に様々な影響を与えています。輸入食品の取り扱いにおいては、各国の規制の違いに注意が必要です。

関連項目

サッカリン
ズルチン
* ちくろ幼稚園

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