チヒロザメ

チヒロザメ (Pseudotriakis microdon)

チヒロザメはチヒロザメ科に所属するサメで、全長は最大で3メートルに達します。このサメは主に全世界の大陸斜面、500メートルから1400メートルの深さで見られ、非常に珍しい存在です。特徴的な点として、非常に長い第一背鰭、細長い眼、大きな口を持つことで知られています。体色は暗褐色で、細かい歯が並び、主に魚類やその死骸、無脊椎動物を食べて生活しています。

分類と名称

チヒロザメは1868年にポルトガルの魚類学者Félix de Brito Capelloにより記載されました。彼が用いた標本はカナリア諸島の沖合で捕獲された全長2.3メートルの雄成体です。この際、彼は本種とドチザメ属とを混同し、属名に「偽」を意味するギリシャ語の「pseudo」を付けたことが英名の由来となっています。日本語では「千尋」という名が付けられていますが、これは深海を象徴しています。以前の名称は「オシザメ」でしたが、差別的表現とされ、2007年に改名されました。

形態

チヒロザメの体は柔らかく、頭部は広く、吻は丸みを帯びています。目は小さく、瞬膜が備わっており、口は大きく、顎には200列以上の歯があります。第一背鰭は特徴的で、胸鰭から腹鰭にかけて長い基底を持つ一方、第二背鰭は臀鰭よりも大きく、近接しています。体色は一般的に暗褐色で、鰭の縁には黒い色がありますが、まれに白地に不規則な黒斑点のある個体も報告されています。

生息地と分布

チヒロザメは世界各地で見つかるものの、捕獲されること自体が希少で、分布範囲は広いとされています。具体的には、西部大西洋でのカナダからブラジル、東大西洋ではアイスランドからポルトガル、インド洋及び太平洋域では日本、ハワイまで報告されています。主に深度500メートルから1400メートルの大陸斜面に生息しますが、最深で1900メートルの記録もあります。

生態

このサメは非常に緩慢に動く生態を持ち、主にホラアナゴやソコダラ、タチウオなどの硬骨魚類を捕食します。死骸やごみを食べることもあり、胃の中から人為的な廃棄物が見つかることもあります。興味深い点は、卵食型胎生を持つことです。胎児は母体の排卵した卵を食べて成長し、通常は2匹の胎児を妊娠する一方、最大で4匹生むことも可能です。

利用

チヒロザメは混獲されることが稀ですが、肉や肝油が利用されています。特に沖縄では、伝統的にこのサメの油が丸木舟の修理に用いられてきました。繁殖力が低く、個体数の減少が懸念されるため、IUCNによる評価は情報不足となっています。

チヒロザメは、その独特な生態や特徴から非常に興味深いサメですが、数が限られているため、今後の保護活動が求められています。

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