チャイ (トルコ)

トルコのチャイ文化：歴史、生産、そして国民の嗜好

トルコで親しまれるチャイは、リゼ県産の紅茶を指し、その独特の文化は北キプロスやバルカン半島の一部にも広がっています。コーヒーが主流だった歴史を持つトルコにおいて、チャイが国民的飲料として愛されるようになった背景には、様々な要因が絡み合っています。

歴史：コーヒーからチャイへ

16世紀、シルクロードを通じてトルコに伝わった紅茶は、400年もの間、日常生活に浸透することはありませんでした。コーヒーが主要なホットドリンクとして君臨する中、1878年にはアダナの統治者であったMehmet Izzetが紅茶の利点を著書で紹介するなど、徐々にその存在感を増していきました。イスタンブールのティーハウス開店なども相まって、茶の消費は徐々に拡大していったものの、真の普及は20世紀に入ってからでした。

第一次世界大戦後、コーヒーが高騰・入手困難となったことが、チャイ普及の大きな転機となりました。オスマン帝国の崩壊によりコーヒーの主要産地を失ったトルコでは、コーヒーは高価な輸入品と化しました。一方、黒海沿岸のリゼ県は茶葉の生産に適した気候と土壌を有しており、国内での生産が容易だったため、ムスタファ・ケマル・アタテュルクによるトルコ共和国建国後、チャイは国民的飲料として急速に普及していきました。コーヒー1杯の価格で4杯のチャイが飲めたという逸話も、その普及を裏付けるエピソードと言えるでしょう。

生産：世界有数の紅茶市場

2004年時点でのトルコの紅茶生産量は20万5500トンに及び、世界全体の6.4％を占めるなど、世界有数の紅茶市場を形成していました。そのうち12万トンは国内消費、残りは輸出に回されており、トルコ人の1人あたりの年間消費量は2.5kgと、イギリスの2.1kgを上回っていました。生産の中心は、黒海沿岸のリゼ県で、その温暖な気候と肥沃な土壌が良質な茶葉の生産に貢献しています。

飲み方：チャイダンルックとチャイグラス

トルコの喫茶文化において、チャイはコーヒーと並ぶ重要な存在であり、最も一般的なホットドリンクです。客をもてなす際にも必ずと言っていいほどふるまわれ、家庭、お店、男性の集会所(kıraathane)など、あらゆる場所で親しまれています。カフェやレストランでは1日に20杯から30杯も飲む人もいるほどです。

独特の2段重ねのポットである「チャイダンルック」を用いて淹れられるチャイは、非常に濃く抽出され、飲む際に熱湯で薄めて、角砂糖を加えて飲用するのが一般的です。チューリップ型をした小さなグラス「チャイバルダック」で飲むのが伝統的なスタイルで、トルコでは年間4億個ものチャイグラスが販売されています。大都市では、陶器のカップで飲むこともあるようです。

ハーブティー：薬用としての利用

トルコでは、[ハーブティ]]ーは薬用として一般的に利用されています。アップル(elma çayı)、ローズヒップ]、シナノキ(ıhlamur çayı)などが人気で、特に外国人観光客にも人気です。地中海沿岸地域では[セージ]が好まれています。これらの[[ハーブティーは、aktarと呼ばれるハーブ専門店で購入することができます。

無形文化遺産登録

2022年には、トルコとアゼルバイジャンのチャイ文化がUNESCOの無形文化遺産に登録されました。これは、トルコのチャイ文化が世界的に認められた証であり、その歴史と伝統が未来へと受け継がれていくことを示しています。

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