リゼ県

リゼ県（Rize ili）

リゼ県は、トルコ北東部の黒海地方に位置する県です。黒海沿岸に面し、東から時計回りにアルトヴィン、エルズルム、バイブルト、トラブゾンといった県と隣接しています。県都はリゼ市です。県の名前の由来は、ギリシャ語の「ριζα(riza)」で、山の傾斜を意味します。この地は、その名の通り、山がちな地形が特徴です。

自治体

リゼ県には、以下の12の自治体が存在します。

リゼ（Rize）
アルデシェン（Ardeşen）
チャムルヘムシン（Çamlıhemşin）
チャイェリ（Çayeli）
デレパザル（Derepazarı）
フンドゥクル（Fındıklı）
ギュネイス（Güneysu）
ヘムシン（Hemşin）
イキズデレ（İkizdere）
イイデレ（İyidere）
カルカンデレ（Kalkandere）
パザール（Pazar）

地理

リゼ県は、黒海地方に沿って伸びる山脈の北側に位置しています。海に近いため、夏は涼しく、冬は比較的温暖な気候です。年間を通して降水量が多く、トルコ最大の茶の生産地となっています。近年では、キウイフルーツの栽培も盛んです。

県内は山地が多く、谷間や高地の牧草地など、豊かな自然が広がっています。特にチャムルヘムシン村は、観光地として人気があります。山間部では、ケーブルカーが人や物資の輸送に使われるなど、独特の風景が見られます。近年、黒海沿岸道路が整備されたことで、リゼへのアクセスが向上し、観光客が増加しています。しかし、この道路建設が海岸線の生態系に悪影響を与えているという指摘もあります。現県知事は、道路の拡張に反対し、養蜂やマスの養殖、有機栽培の茶の生産を推進しています。

原生植物としては、セイヨウバクチノキが挙げられます。この木は、食用の小さな黒いプラム状の実をつけます。また、ブルーベリーも栽培されています。茶は、この地域の原生種ではありませんが、リゼでは非常に良く育ちます。東黒海山脈の一部は古生代に形成され、渓谷は白亜紀からの浸食によって形成されたと考えられています。

歴史

古代

リゼ県に関する古代の情報は限られています。深い森に覆われており、発掘調査も十分に進んでいません。初期の記録では、クルク人やクルハ人といったアジア系の民族が居住していたとされています。その後、ウラルトゥ王国のサルドゥリ2世によって建てられた碑文にも、この地域の名前が記録されています。

その後、キンメリア人がコーカサス地方から移住し、Çoruh川周辺に定住しました。キンメリア人はアナトリアに広がり、リゼのいくつかの村は、彼らにちなんで「Kemer」と呼ばれるようになりました。紀元前680年頃、サカ人がグルジアのキンメリア人を滅ぼしましたが、サカ人もメディア王国の攻撃を受け、紀元前626年に王マドヴァが殺害されました。その後、この地域はトルコ人とグルジア人に占領されました。

中世

古代ギリシャ人は、紀元前670年頃から黒海沿岸に交易拠点を築いており、リゼもその一つであったとされています。ペルシャ帝国がアレクサンドロス大王に敗れるまで、この地域はペルシャ帝国の影響下にありました。アレクサンドロス大王の死後、アナトリアにはビテュニア、カッパドキアなどの王国が誕生し、黒海東端に近いこの地域にはポントス王国が成立しました。リゼもポントス王国に併合されました。

その後、10年から395年にかけてローマ帝国の支配下に入り、さらにビザンチン帝国（東ローマ帝国）が続きました。プリニウスやアッリアノスは、この地域のラズ人について記録しています。

626年頃には、ペルシャからスキタイ人がヘムシン近郊に移住し始めました。11世紀には、ペルシャがグルジア王国を破り、マラズギルトの戦いでビザンチン帝国を破ると、多くのトルコ人がこの地に住み始めました。Çoruh川の地域は、アナトリアのトルコ人王国に組み込まれました。キプチャク系のトルコ人を含む多くのトルコ人が沿岸部に移住しましたが、1098年には再びビザンチン帝国の支配下となりました。その後、1204年にはコンスタンティノープル包囲が行われ、この地域はビザンチン帝国の亡命政権であるトレビゾンド帝国の一部となりました。しかし、ビザンチンに支配された時代も、この地域にはトルコ人の移住が続き、集落も存在し続けました。

トルコ時代

セルジューク朝の庇護下にあった時代、アナトリアから多くのトルコ系部族がこの地に移住しましたが、その忠誠心は低く、反乱や暴動が頻発しました。これらの混乱は、トレビゾンド帝国がオスマン帝国に朝貢し、1461年に滅亡するまで続きました。1470年、リゼはローマ帝国から連綿と続く帝国の最後の県として陥落しました。第一次世界大戦中には、カフカス戦線の戦場となり、1916年から1918年にかけてはロシア帝国に占領されましたが、1918年のブレスト＝リトフスク条約で返還されました。1924年からは、トルコ共和国の県となりました。

現在、この地域では、ローマやギリシャ風の地名が徐々に消えつつありますが、ポントス時代からの古い地名は今も残っています。県名もその一つです。1940年代に茶の生産が始まるまで、リゼはソビエト連邦との国境に近い辺境の地であり、貧しい地域でした。多くの人々がイスタンブールや海外に出稼ぎに行っていました。

リゼの町は、山地と海岸の間の狭い平地に位置しています。町によって人々の生活習慣が異なり、山奥の村では、雨の多い急斜面に木造建築が立ち並んでいます。リゼは茶の産地としても知られるようになりました。

文化

料理

リゼの伝統料理は、非常にコクがあり、アンチョビが多くの料理に使われます。アンチョビを使った料理には、hamsi buğulama（イワシの重ね蒸し煮）、hamsi stew（煮込みシチュー）、hamsi köfte（イワシのつみれ）などがあります。他にも、Lahana çorbası（キャベツスープ）、muhlama（チーズ、トウモロコシ粉、バターから作られる）、pides（様々な味のピタパン）などが郷土料理として知られています。

フォークダンス

リゼでは、ケメンチェの伴奏に合わせてホロンと呼ばれるダンスが披露されます。ツルムやカバルによる伴奏も多いです。ダンスの際には、伝統的な衣装を身につけます。男性はシャツ、ベスト、ジャケット、ジプカ（膝丈のフェルトのズボン）、黒い靴を履いて踊ります。ジャケットには、hemayilsと呼ばれる宗教的なお守りである銀の刺繍が施されており、邪悪から身を守るとされています。女性の踊り子は、カラフルな衣装と自身で様々なモチーフを描いたスカーフを身につけて踊ります。

工芸品

リゼでは、様々な伝統的な工芸品や記念品が作られています。特に有名なものとしては、枝編み細工のかご、銅細工、ソックス、肩掛け鞄、ツゲで作られたスプーンなどが挙げられます。

関連項目

* リゼ・ティー

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