チャイントン

チャイントン（Kyaingtong）は、ミャンマーのシャン州東部に位置する都市で、ケントゥン、チェントゥンとも呼ばれます。シャン高原の山々に囲まれた盆地にあり、タイ国境のタチレクから約160キロメートル、中国国境のモンラーからは約80キロメートルの距離にあります。町の中心にはノントゥン湖があり、その周辺には寺院、商店、民家が密集しています。

地理と気候

チャイントンは、山々に囲まれた盆地に位置しており、その地理的な特性が気候に影響を与えています。ケッペンの気候区分ではサバナ気候に分類され、標高が高いため、冬の時期には最低気温が10℃を下回ることもあります。特に12月から1月にかけては冷え込みが厳しく、霧が立ち込めることもあります。ただし、雪が降ることはありません。最も暑い時期は4月で、気温が40℃近くまで上がることは稀です。雨季は5月から10月までで、特に8月から9月にかけて降水量が多くなります。冷える季節には、家の中で火鉢を使って暖を取る習慣があります。

歴史

チャイントンの歴史は古く、かつてはワ族が居住していましたが、13世紀にランナー王国のマンラーイ王によって征服され、城塞都市が築かれました。その後、北タイからの移民によりタイ系クン族が主な住民となりました。マンラーイ王は王子と僧侶を派遣し、チャイントンを支配させ、以降、チャイントンはランナー、ビルマ、中国に朝貢しながら、マンラーイ王の直系子孫による統治が1962年まで続きました。

ソーボワ（藩王）治世

マンラーイ王の子孫はソーボワ（藩王）としてチャイントン藩を世襲統治しました。19世紀にビルマがイギリス領インド帝国に編入された後も、ソーボワによる自治が認められましたが、英国人弁務長官の監督下に置かれました。1905年には、ソーボワ・サオ・コン・キャオ・インタレンによって、ノントゥン湖畔に西洋風の宮殿が建てられました。第二次世界大戦中、チャイントン藩は一時タイ王国に割譲されましたが、戦後、パンロン協定によりシャン州各藩とともにビルマ連邦へ加入しました。しかし、アウンサン将軍の暗殺と1962年の軍事クーデターにより、ソーボワ制は終焉を迎えました。最後のソーボワ・サオ・サイ・ロンは軍事政権によって投獄され、釈放後ヤンゴンで死去しました。1991年、ミャンマー政府はノントゥン湖畔の宮殿を爆破・解体しました。

山田長政残党伝説

元ビルマ大使の鈴木孝は、在任中にチャイントンに山田長政の残党とみられる日本武士団が亡命してきたという伝承を聞いています。その内容は、アユタヤ王朝時代に62人の武士がシャムを逃れ、チャイントンに到着し、地元住民に受け入れられたというものです。彼らは地元の有力者の娘と結婚し、住民は彼らの習慣を真似るようになったと伝えられています。この伝説は、チャイントンの歴史に興味深い側面を加えています。

交通

チャイントンは周囲を山に囲まれているため、他の都市へ行くには山道を通るか、航空機を利用する必要があります。しかし、古くから交易の要衝であり、現在でも、ミャンマー中部メイッティーラと泰緬国境タチレクを結ぶ国道4号線と、中緬国境へ通じるアジアハイウェイ3号線の合流地点となっています。2015年現在、外国人はタイ国境タチレクとの間をバスやタクシーで往来できますが、他の都市との陸路移動は制限されています。空路ではヤンゴンやマンダレーなど国内都市との移動が可能です。

まとめ

チャイントンは、その地理的な特徴、歴史的な背景、独自の文化により、ミャンマーの中でも特異な都市です。山々に囲まれた盆地に位置し、タイと中国の国境に近いことから、多様な文化が交差する場所でもあります。ソーボワによる統治の歴史や山田長政の残党伝説など、興味深い歴史的背景も持っています。この都市は、交通の便が限られているものの、独自の魅力と深い歴史を持ち合わせています。

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